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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~
第5章 四の巻
 やはり、我が身は天に見放されたのか。
 このまま、あの卑劣な男の許に連れ戻されてしまう運命なのか。そう思うと、口惜しさと絶望に居たたまれなくなる。
「お願いでございます。私をここから逃して頂けませんか。ここを出れば、私は一人でいずこへなりとも参ります。あなたにはけしてご迷惑はかけませんゆえ、どうか、どうか」
 頼みの綱はこの眼の前の男だけである。
 公子は藁にも縋る想いであった。
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