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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~
第5章 四の巻
 男の視線がわずかに泳いだ。
 それも道理だ。ここで今、公子を逃がしたことが露見すれば、男は畏れ多くも帝を欺いた罪を着ることになる。公子にとって男が見ず知らずの他人であるように、男にとってもまた公子はゆきずりのただの女にすぎない。何もその女のために自分のこれからの一生どころか生命を賭ける必要はない。
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