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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~
第5章 四の巻
 いかほど歩いただろう、ふいに突き当たりに遭遇した。宮中の庭をぐるりと取り囲んだ長い築地塀にそこだけ、ぽっかりと穴が開いたように隙間ができている。人ひとりがやっと通り抜けられるほどのその破(や)れ間に、男は公子を背に負うたまま難なく身をすべらせた。
 そのほんの小さな、ささやかな空間は、公子にとっては自由な世界に通じる入り口でもある。
 かすかな期待と大きな不安を胸に、公子は男に背負われ、外の世界へと飛び出す。
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