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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~
第6章 伍の巻
当代きっての学者と名高い文章博士紀伊公明は、何を隠そう、この公之の伯父になる。公子自身、この公明にずっと師事していたゆえ、最初に公之からその話を聞いたときは、偶然とはいえ師匠の甥に助けられたことに随分と愕いたものだ。
紀伊家は代々、学者の家柄で文章博士を輩出してきている。だが、公之自身は幼時から学問よりは武芸に興味を持ち、机に向かうよりは専ら庭で刀や弓を手にしている方が性に合っていたのだと、これは公之当人が笑いながら話したことである。
紀伊家は代々、学者の家柄で文章博士を輩出してきている。だが、公之自身は幼時から学問よりは武芸に興味を持ち、机に向かうよりは専ら庭で刀や弓を手にしている方が性に合っていたのだと、これは公之当人が笑いながら話したことである。