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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~
第6章 伍の巻
左大臣―現在は関白太政大臣の要職にあり、更に内覧をも拝命した道遠は我が世の春とばかりに権力者としての栄華を極めている。その太政大臣家では、失跡から四ヵ月を経た先月、公子の葬儀がしめやかに執り行われた。道遠は我が娘は早々と死んだものと諦め、遠縁の娘を養女として迎え、近々、帝の許に入内させる算段だとも聞く。
―哀れにも、太政大臣の姫君は、鬼に攫われ、喰われてしまったというぞ。
都の人々は声を潜めて、そう噂し合った。
―哀れにも、太政大臣の姫君は、鬼に攫われ、喰われてしまったというぞ。
都の人々は声を潜めて、そう噂し合った。