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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~
第6章 伍の巻
 帝の寝所に召されたその夜、陵辱されそうになったところをあわや逃げた公子は、〝鬼に攫われ、姿をかき消してしまった〟と宮廷では取り繕った。まさか、帝を嫌った姫が閨から事の真っ最中に逃げ出したのだとは、帝の体面上も口にはできない。むろん、その夜、禁裏に居合わせた人々は皆、真相を知ってはいたけれど、表立ってそれを話す者はいなかった。
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