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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~
第6章 伍の巻
 つまりは、現在の公子がそれだけ落ち着いた日々を送っているということにもなる。
 耳を澄ませると、遠方からかすかに川の音が聞こえてくる。あれは、宇治川のせせらぎだ。時折、空高くで鳴く鳥の声が心に滲みた。仮寝の中で聞いたせせらぎや鳥の声は、恐らくは現のものであったに相違ない。
 低い川の音に耳を傾けていると、改めてここが都から遠く離れた宇治なのだと実感する。
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