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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~
第6章 伍の巻
「お前だって、頑張って生きているのよね」
 毛虫はもぞもぞと公子の手の上で蠢く。
 その虫に真剣に語りかけている公子を、公之は傍らで眼を細めて眺めていた。
 しばらく心地良い静寂が流れる。
「そうやって虫と話しているときの姫は、本当に幸せというか、愉しそうですね。何だか私といるときよりも愉しそうで、男として少々妬けますね。もっとも、幾ら何でも人が虫に嫉妬するなぞ、あまりにも滑稽な気もしますが」
 唐突な言葉に、公子はハッと現実に返った。
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