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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~
第2章 壱の巻
 相模は心の中で雪の切片にも似た花を眺めながら、ひそかに思った。
「それに、ほら、こんな虫も見つけたのよ」
 公子は無造作に手を伸ばしたかと思うと、桜の樹に付いた虫をつまんだ。壊れ物を扱うようにそっと手のひらに載せて差し出す。
 その手のひらを覗き込んだ相模から、たまぎるような悲鳴が響いた。
「ま、どうしたの?」
 公子は愕いて、眼を見開く。心外だと言わんばかりに大きな眼を更に大きくして、この姉のように慕う侍女を見つめた。
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