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ヒヤシンスの恋
第2章 薔薇の秘密

…僕とそのひとが恋人同士になるのに、そんなに時間は必要なかった。
染布は微かに照れたように微笑んだ。
それは、眩しいほどに清らかで美しい微笑みだった。
「…僕がそのひとに夢中になったんだ。
優しくて穏やかで大人で…でも、どこか孤独な影があって…。
恋をしたんだ…。
まるで、落とし穴に落ちてしまったみたいに…。
不意打ちみたいにね…」
…不意打ちみたいな恋…
そんな恋、したことなかったな…
菫はふと思った。
亮一のことは最初から好感を持っていたけれど、劇的に恋に落ちたわけではない。
告白され、付き合う内に段々と好きになっていったのだ。
「…幸せだったな…。
いつも一緒にいて…その人は僕のためにピアノを弾いてくれた。
僕には世界一美しい音楽だった…。
僕も一緒にピアノを弾いたよ。
…二人だけの音楽を奏でて…そして、夜となく昼となく愛し合った…。
…激しく、甘く…」
…天国みたいだった…。
染布の美しい貌に、薫り立つような艶が染められる…。
菫の胸は、ほろ苦く締め付けられる。
「…でも、どうして?」
…別れることになったのか?
「…事故があったんだ。
大学の古い煉瓦の壁が崩れ落ちる…。
僕がたまたまその側を歩いていて、その人が僕を庇って大怪我をした…。
僕もその時、指の腱を損傷した。
けれど、僕なんかより比べ物にならないくらい、その人は大怪我をした。そう聞かされた。
退院した僕は急いでその人の病院にお見舞いに行こうとした」
…けれど…
染布が初めて貌を歪めた。
「…もう僕の貌を見たくもない。
二度と目の前に現れないでくれ…。
自分の人生に関わらないでくれ…。
そんな手紙を渡されて、会うことも叶わなかった」
染布は微かに照れたように微笑んだ。
それは、眩しいほどに清らかで美しい微笑みだった。
「…僕がそのひとに夢中になったんだ。
優しくて穏やかで大人で…でも、どこか孤独な影があって…。
恋をしたんだ…。
まるで、落とし穴に落ちてしまったみたいに…。
不意打ちみたいにね…」
…不意打ちみたいな恋…
そんな恋、したことなかったな…
菫はふと思った。
亮一のことは最初から好感を持っていたけれど、劇的に恋に落ちたわけではない。
告白され、付き合う内に段々と好きになっていったのだ。
「…幸せだったな…。
いつも一緒にいて…その人は僕のためにピアノを弾いてくれた。
僕には世界一美しい音楽だった…。
僕も一緒にピアノを弾いたよ。
…二人だけの音楽を奏でて…そして、夜となく昼となく愛し合った…。
…激しく、甘く…」
…天国みたいだった…。
染布の美しい貌に、薫り立つような艶が染められる…。
菫の胸は、ほろ苦く締め付けられる。
「…でも、どうして?」
…別れることになったのか?
「…事故があったんだ。
大学の古い煉瓦の壁が崩れ落ちる…。
僕がたまたまその側を歩いていて、その人が僕を庇って大怪我をした…。
僕もその時、指の腱を損傷した。
けれど、僕なんかより比べ物にならないくらい、その人は大怪我をした。そう聞かされた。
退院した僕は急いでその人の病院にお見舞いに行こうとした」
…けれど…
染布が初めて貌を歪めた。
「…もう僕の貌を見たくもない。
二度と目の前に現れないでくれ…。
自分の人生に関わらないでくれ…。
そんな手紙を渡されて、会うことも叶わなかった」

