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ネコの運ぶ夢
第6章 お料理ネコ
そろそろいいか?玉ねぎ。
出しておいたひき肉に玉ねぎ、牛乳、パン粉、ナツメグ、塩コショウ、卵・・・こねて、空気抜いて・・・。

時間は7時半。そろそろ夕食にしてもいいだろうか。
「音子、もう焼いていいか?食べられるか?」
昼が遅かったので一応聞いてみる。まあ、返事は分かってるが。

「大丈夫です!音子はお腹が空きました!」

だよね。いつもご飯のときは嬉しそうだが、今日は輪をかけて嬉しそうに見える。
焼く前に、ソースの準備。いちばん簡単なやつ。ウスターソースとケチャップを少し小さい深皿に出しておく。焼き終わった後、これをフライパンに入れてソース完成。

まあ、こんなもんだろう。

ハンバーグの焼けるいい匂いがする。実に40年ぶりくらいに作った割には美味しそうにできたように思う。一個、ひび割れたが・・・。

焼いている間に、副菜を皿に盛り付ける。スープをもう一度火にかけ、温める。揚げ焼きもマリネも冷めてもおいしいので、このままでいいはず。

さあ、ひっくり返すぞ。一個はうまくいったが、ひび割れたもう一個は完全に割れた。まあ、こっちは俺んだな。

なんだかんだ言って、1時間以上準備にかかった。その間、飽きもせず音子は俺が料理をするところをじっと見ていた。

一応、ハンバーグなので、ご飯ではなく、ロールパンを添えてみる。
これでどうだ?結構、俺の調理技能の限界だ。

「わあ!!!すごい!すごいです!!市ノ瀬さん!天才シェフです」
やめてくれ、大げさすぎて、心の置き所に困る。ハンバーグ一個割れているし、単なる家庭料理だ。

音子が席につく。俺も向かいの席に座った。
「いただきます」
うちにはフォークはあるが、ナイフなるものがないので、箸を出してある。主食がパンで箸というのもなかなかシュールだが、勘弁して欲しい。

ハンバーグを口に運ぶ。ああ、ちゃんと火が通っている。よかった、そこそこ美味しい。
ここで俺はやっと異変に気づいた。音子が全く手を付けていない。

ハンバーグを凝視するようにうつむいて動かないでいた。表情が見えない。いったい何があった。
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