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ネコの運ぶ夢
第14章 ネコの秘密
ここを読んでくれているということは、私のことを知ろうとしてくださっているのだと思います。私にとって、市ノ瀬さんがそう思ってくれることはとても嬉しいことです。

もう、市ノ瀬さんは私が「音子」ではないことを知っていますよね。私の本当の名前は「中条静香」です。中条家の次女ということになっています。

『ということになっています』と変な表現をしましたが、これは嘘ではありません。私はあの家の子であって、そうではないのです。あの家に私の息ができるところはないのです。

これには、大きく3つの理由があります。

ひとつ目は、私が母である玲子が不倫の末に身ごもった、望まれない子だった、という事実です。

母は若い頃から社交的で男性にチヤホヤされるのが好きな人でした。その美貌と人を惹きつける独特の才能のお陰で社交界で成功していました。

そして京介を射止め、中条家に嫁ぐことになったのです。結婚後もその才能は活かされ、母の人脈は京介の仕事に大いに役立つことになったのです。

京介は母を、母は京介を互いに利用し合うような関係でした。

しかし、母が一人の男で満足できるわけがなかったのです。長女である京子を産んだあと、社交界で知り合った若い男性と恋に落ち、その男の子を身ごもりました。最初は駆け落ちするつもりだったようですが、相手の男性が犯罪に手を染めていたことが分かり、それも叶わなくなりました。結果、母は京介に泣きついたのです。

京介は家のメンツを何よりも重んじる人だったので、母が不倫をした事実そのものをもみ消してしまいました。実際、今となっては、母の不倫相手の犯罪を暴いたのも京介だったのではないかとさえ思います。

そして、そのときに母が身ごもっていたのが私でした。私はこうして望まれない子としてこの世に生を受けたのです。

その後、母は京介との間の二人目の子である康介を産みました。男の子が生まれたことで京介はこの上なく喜び、母の不倫の件はそれ以降、不問になりました。

ただ、私だけは中条の家で認められないままでした。
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