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トライ アゲイン
第8章 安祐美の母

『やだ!あの人ったら不倫しているの?』

汚らわしいとばかりに
白物も柄物も分別せずに、まとめて洗濯機に投げ込んだ。

夫が浮気するのも仕方ないのかもしれないと、
衣類が洗濯で汚れを落としてゆくように
由美子はゴォンゴォンという洗濯機の音を聞きながら、落ち着きを取り戻してゆく。

安祐美が中学校に進学するのを機に
由美子は夫の太郎から夜の誘いを断ることにした。
もうかれこれ夫とはセックスレスの状態が続いている。

40代と言ったって、まだまだ夫は性欲が沸いてくるのだろう。
なのに、主婦の由美子は家事などやることがたくさんで、夜になると性欲よりも睡眠欲の方が勝ってしまい、ついついセックスなんてしなくてもいいと考えてしまっていた。

だけど、あの病室で看護師の梨田に抱かれて
眠っているはずの由美子の性欲が再び目覚め始めていた。
休まなくては思うのだが、
ベッドに横になると、ついつい自分の体を弄ってしまう。

『オナニーなんて寂しい女がするものだわ』

乳房を揉んだ手の動きをストップさせて
自分は寂しい女なんかじゃないと
言い聞かせようとしたが
夫が由美子から離れて、安祐美が目覚めない今となっては、そうか、私は寂しい女になってしまったんだわと再び乳房に手を添えた。

隣のベッドの枕から
微かだが夫の整髪料の香りがした。

「…あ、あの人の匂いがする」

由美子は夫の枕を抱きよせて
枕に顔を埋めて深呼吸をしてみた。
我ながら変態みたいだわと思いながら、
吐く息が熱を帯び荒くなっているのがわかった。

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