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トライ アゲイン
第9章 目覚めの時
「あなたは…?」
目を無理やり開かされて
ペンライトの明かりを眩しく感じながら
安祐美は男に尋ねた。
安祐美が驚くのも無理はなかった。
だって、その男は
ついさっきまで駅弁スタイルでガンガン安祐美を突いていた『彼』だったのだから…
「もう大丈夫そうですね
念のためにもうしばらくは入院してもらいますが
明後日ぐらいには退院してもいいかもしれませんね」
安祐美にそのように告げながら
ドクターは母の由美子に向き直って
「お母さん、今回は本当にすみませんでした」と
深々と頭を下げた。
「そんな…気になさらないで下さい…
実際、安祐美は先生が急ブレーキを踏んでくれて
寸前のところで停まってくれたんですもの」
「いえ、そのときのショックからか
5日間も娘さんの意識が戻らなかったわけですし…」
ドクターが言うには
安祐美が急に道路に飛び出してきたのだそうだ
寸前のところで衝突は免れたけれど
その場で安祐美は意識を失ってしまい
ドクターが勤務するこの病院に担ぎ込まれたのだった。
「いやぁ~、安祐美ちゃん、本当に良かったねえ」
ドクターを呼びに飛び出した男が
嬉し涙を流し続ける母の由美子の肩を再び力強く抱いた。
「お母さん…この方は?…」
親しげに母の肩を抱く男を不審の眼差しで見つめながら安祐美は母に尋ねた。
「いやねえ、この子ったら…
お父さんの顔を忘れてしまったの?」
母の言葉に安祐美は「またまた~、冗談キツイんだかららぁ」と母の手をペシペシと叩いたが、
「先生…これってまさか、部分的な記憶喪失でしょうか?」と母の由美子は
ものすごい不安に満ちた表情で医師に語りかけた。