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トライ アゲイン
第9章 目覚めの時

「そうですねえ…
まあ、5日間も眠り続けていたんですから
多少の記憶の混濁はあるかと思いますが、
すぐに欠落している記憶も戻ると思いますよ」

医師の言葉に母の由美子は安堵の表情を浮かべた。

それにひきかえ、母の肩を抱いている男の表情が強張る。

「いや、安祐美ちゃんはもともと僕と由美子の結婚に大反対でしたから、潜在意識として僕を父親と認めたくないんでしょうよ」

寂しげな憂いをまとった男の顔がひきつっていた。

「安祐美にしてみれば彼を父親と認めたくないのはわかるわ…でも、安祐美の実の父親である太郎さんは、私たちを捨てて若い女を選んだのよ
あんな白状な男より梨田の方がよほど父親らしいと安祐美は認めてくれたじゃないの」

首がガクンガクンするほどに母の由美子から体を揺すぶられた。

『お父さんとお母さんが離婚?
それは私が眠っている間の出来事ではなくて
私が眠りに落ちてしまう前の出来事?』

思い出せないのではない。
頭の中をどこをどう探してもそんな記憶の一欠片さえないのだ。

それに…
私を抱いて何度も逝かせてくれた男が医師?
私はどこへ行ったの?
これもパラレルワールドのひとつ?
いえ、違うわ、過去の私の行動で現代が変わってしまったのよ!きっとそうだわ!

眠ってしまいたい…
そして、本当の自分を取り戻したい…

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