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トライ アゲイン
第3章 心だけタイムスリップ
母親の由美子が入院手続きのために席を外したのを機に、父親の太郎はすかさずロビーの長椅子で憔悴しきっている小向の隣に腰を下ろした。
「君、たしか小向くんとか言ったね」
「ええ、小向です
小向昭吾と申します」
「君はいったい…うちの安祐美とどういう関係なのかな?」
「あ、すいません申し遅れました
私、安祐美…さんと同僚でございまして」
すかさず小向は名刺入れから一枚を取り出して
名刺を父親の太郎に手渡した。
「単なる同僚ではないよね?」
ずっと娘の安祐美の事を
呼び捨てにしそうになっている青年に
単なる同僚という関係ではないとピンときていた。
「おっしゃる通りです…
正式には申し込んでいませんが
お嬢さんとはお付き合いをさせていただこうと思っています」
セックスの最中にどさくさに紛れてプロポーズしたことについては今は黙っておいた方がいいだろうと思った。
「そうですか…お付き合いを…
いや、君のような立派な青年ならこちらの方こそ喜んでお付き合いをお願いしたいぐらいだ
どうか、娘の事をよろしく頼むよ」
こりゃあ自分に孫が出来る日も近いなと
安祐美の父親の太郎は安祐美に命の別状はないこともあって、二重にホッとしていた。
しかし、骨折程度だと診断された肝心の安祐美は
一晩ICUで過ごした後も一向に目覚めようとはしない。
医師も不審に思って
それから脳波やら、頭のMRIを撮影して精密検査をしたが、どこにも異常はない。
なのに、皮膚への刺激を施しても
安祐美の体はピクリともしなかった。