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トライ アゲイン
第3章 心だけタイムスリップ
授業が終わると昼食時間がやって来た。
「安祐美ぃ~、お弁当一緒に食べよ」
親友の優希ちゃんが机を寄せてくる。
「お弁当?」
そんなものあるはずがなかった。
なんたって安祐美はラブホテルからの朝帰りだったのだから。
「早くお弁当を出しなよ」
優希ちゃんが安祐美の机の横に置いてある学生鞄を指差した。
「えっ?」
そこには見覚えのある使いなれた安祐美の学生鞄…
中を開けてみると、当時お気に入りだったディズニーのランチバッグ…
恐る恐る蓋を開けると、なんとも懐かしい母の手作り弁当…
「優希ちゃんだよね?」
頭の混乱を整理するように
親友の優希に確かめてみた。
「やだぁ~、私の事を忘れたとでも言うの?」
すでにお弁当を開いて一口目を頬張っりながら
優希ちゃんは怪訝そうな顔をした。
「えっ?今、何年?」
「平成20年に決まってるじゃん」
何、バカな事を言ってるのよと
ウィンナー一本あげるから卵焼き頂戴ねと
あの日のように優希は断りもなく安祐美の弁当箱から卵焼きの一切れを盗んでいった。
『これって…
バックツゥザフューチャー?』
父のお気に入りのDVDでタイムスリップする内容の映画を思い出した。
でも、あれは本人がそのまま時間旅行してしまう物語だった。
しかし、今の安祐美は中学生時代のままで制服を着て胸だってさほど膨らんでいない。
『私、中学生に戻ったんだわ…
でも、記憶は25歳のまま…』
それじゃあ、心だけタイムスリップしてきたって事なの?
信じられない事だけど
そう考えずにはいられなかった。