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トライ アゲイン
第3章 心だけタイムスリップ
校門の方に向かって急ぎ足で立ち去ろうとする安祐美の腕を岡山先生がスッと手を伸ばして鷲掴む。
「先生?」
「遅くしてしまってお詫びに送っていくよ」
まるで拉致でもするかのように
引きずられるように教職員の駐車場まで連れ去られた。
「先生、大丈夫ですから
通い慣れた通学路ですから」
掴まれた腕を振り払おうとするけれど
捕まえた獲物を逃がすまいとする猛獣のように
岡山先生の指はガチッと安祐美の二の腕に食い込んでいた。
「先生、痛いってばぁ!」
「そうかい?これ以上、痛い思いをさせたくないんだ。だから、おとなしく車に乗りなさい
いや…乗れ!!」
名字が岡山なのでクラスの皆は担任の岡山先生の事を陰で「桃太郎」とあだ名をつけて面白がっていた。
そんな風にからかわれるのは
岡山先生が滅多な事では怒らないということで
ある意味、クラスメートは担任に対して親しみを感じていた。
そんな温厚だと思われていた岡山先生が
声を荒げて安祐美を車に連れ込もうとしていた。
荒げたのは声だけではない。
鼻息も荒くムフ~っ!と興奮状態にあり、
その目は野獣のように血走っていた。
このまま無碍(むげ)に抵抗すると身の危険を感じた。
「それじゃあ…お言葉に甘えて送っていただきます」
そう言って彼の車の助手席に乗り込むと
「そうかい、そうかい…僕に送らせてくれるんだね」と目尻を下げて、安祐美の記憶の中にある温厚な岡山先生の笑顔になっていた。