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トライ アゲイン
第3章 心だけタイムスリップ
『おかしい…絶対におかしい…』
こんな出来事なら
忘れるはずなどない。
記憶間違いなどではなかった。
それに、25歳にもなった自分が中学時代にタイムトリップ?
あり得ない!
そんな漫画や映画じゃあるまいし
多分、これは現実などではなく
交通事故のショックで私は夢を見ているのだと思い込もうとした。
「やけに塞ぎこんでいるじゃないか
先生とのドライブはそんなに楽しくないか?」
前方をしっかり見ずに
絶えず助手席の安祐美の顔を覗き込んでくるものだから、対向車が来る度に気がきではなかった。
「先生、お願いだから前を向いて運転してちょうだい」
25歳の自分が車に跳ねられた時の痛みと衝撃がよみがえってくる。
もしかしたら、もう一度交通事故にあえば
元の時代に戻って目を覚ますかしらと思えなくもなかったが、さらに悪い方向に、つまり絶命ということも考えられたので交通事故だけは避けて欲しかった。
「そんなの無理!
だって…せっかく憧れの安祐美とドライブ出来たんだぜ
もうさっきから動悸が止まらないんだよ」
やがて車は交差点を左折した。
「先生!私の家と方角が違います!」
「わかってるよ
お前と海を見たくてな」
安祐美を乗せた車は海岸線を走り、
やがて寂れた漁港に停車した。
遠くの防波堤に夜釣りを楽しもうとしている人影が見えた。
窓を開けて大声で助けを求めようとしたが
ロックが掛けられているようでウィンドウはウンともスンとも言わない。
ならば、ドアを開けてそのまま走り去ろうと
ドアノブに手を掛けようとしたとき、
運転首席から身を乗り出して岡山先生が安祐美に抱きついてきた。