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トライ アゲイン
第5章 安祐美、二度目の高校生活
安祐美の本来の過去のように
彼女は無事に○○高校に入学することが出来た。
入学式を迎えるに当たり
安祐美は真新しい制服に袖を通した。
これで元通りの記憶に戻れたと
ルンルン気分の安祐美とは逆に
制服姿の安祐美を見つめて「やっぱり付属高校の制服の方が可愛いかったわ」と由美子はため息をついた。
「そうか?これはこれで可愛いと思うけどなあ」
父の太郎は、まるで興味などないとばかりに
チラッと制服姿の安祐美を眺めただけで
再び朝食のトーストに噛りついた。
「男親って呑気でいいわね」
由美子は太郎の態度にムカついた。
良い学校に通えば、当然将来性のある男性と知り合うことが出来て、行く行くは官僚夫人さえ手に入れる事が出来たかもしれないのに、
あんな三流高校じゃたかが知れているわと
安祐美の未来設計図を書き直さねばならなかった。
「やばっ!もうこんな時間じゃん!」
新入生は入学式の前にクラス分けを確認しなくては行けないので早めに登校するようにと連絡を受けていた。
まあ、クラス分けと言ったところで過去の記憶で
自分は一組に編入されているとわかっているので新鮮さも驚きもないのだけれど…
「お母さん、とりあえず先に行くわ
入学式の時間までに学校に来てね」
安祐美は母の由美子にそう告げると
真新しいスニーカーを履いて家を飛び出した。
『やっぱり母校っていいわね』
三年間通いなれた高校が見えてくると
二度目の入学式とはいえ心が弾んだ。
体育館の前にはクラス分けを知らせるボードが掲げられていた。
『そんなものみなくても一組だとわかっているんだけどね』
それでも一応、念のために確認してみると
一組の名簿にあるべきはずの自分の名前がなかった。
嘘っ!?どういうことよ?
安祐美の名前があるべきはずの一組に記載されておらず、二組に編入されていた。
『違う…やっぱり記憶が変わってしまっている…』
これでは高校生活で親友になった八坂久美子と出会えなくなってしまうではないか。
いや、それどころか、もしかしたらクラブ活動で本来、バージンを捧げるはずの先輩にも出会えないかもしれない…