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トライ アゲイン
第7章 安祐美の父

「同じ会社なんだから
成績を競い合わなくてもいいじゃないか」

いつになく隣の席から色気を醸し出す水島弘子に
太郎も年甲斐もなく心をときめかせてしまう。

「あんたに負けるのがイヤなのよ」

水島弘子は入社してから
太郎に仄かな想いを寄せていた。
勇気を出して告白しようとしたところ
思いがけずに太郎が総務部の女と入籍するというニュースを耳にした。
こうなると太郎に想いを寄せていた恋心は
ライバルという敵対心に変わってしまった。

「俺は別に仕事に対して真摯に取り組んでいるだけで、誰かと優劣を競っているつもりはないさ」

「その落ち着きぶりが気にくわないって言うのよ!
娘さんが大変なのは知ってるけど、男なんだからさ、もっとギラギラしたところを見せなさいよ!」

「ギラギラ?よせやい、そんな荒くれた野望もないんだよ」

「あんた、結婚してかわってしまったわ
独身の頃は女なら誰とでも寝てやるって匂いがプンプンしてたのに」

酔いが回ってきたのか
水島弘子は太郎の肩に頭を乗せて体を預けてくる。
なんというフレグランスなのかプンと良い香りが太郎の鼻腔をくすぐる。

「もうお酒は飲むなよ、これ以上飲んだら悪酔いするに決まっている」

「もう悪酔いしているかも…
酔いざましが欲しいわ」

「わかった、マスターにお水をもらってやろう」

「水なんかじゃ酔いは覚めないわ」

じゃあ、どうしろって言うんだい?
太郎が水島弘子の顔を覗き込むタイミングで
いきなり弘子が太郎にキスをしてきた。

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