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トライ アゲイン
第7章 安祐美の父
「よ、よせよ!
俺は独身の頃の俺じゃないんだ
今は妻子ある身なんだ」
寄りかかってきた弘子の体をグイッと引き離した。
「あんたは所帯持ちの男になったかもしれないけど、私はあの頃のままよ」
何が「あの頃」なのか太郎には見当もつかなかったが、これって、自分は弘子に誘われているのだなと思わずにはいられなかった。
カウンターの中のマスターに気づかれないように
そっと弘子の胸を揉む。
すかさず待ってましたとばかりに
弘子も太郎の太ももをお触りしてくる。
こうなれば男と女。
この店を出て向かう先はひとつだけだった。
「いいのかい?」
千鳥足になりそうな弘子の肩をしっかり抱いて
体を密着させる。
いいもなにも、水島弘子は独身なのだから
誰とセックスしようが勝手である。
良くないのは妻子持ちの太郎の方だ。
世間では、このような関係を不倫と呼ぶが、
当の太郎は娘の安祐美の病状を気遣ってばかりなので、ほんのひとときのオアシス…いや、アバンチュールだと思うようにした。
ラブホテルの一室に入ると
本当に酔っているのか?と疑うほどに
弘子は自らレディスーツを脱ぎ始める。
「なんだ、酔っていないじゃないか」
シラフならば後々面倒なことになると思い
太郎が弘子が脱衣するのを止めさせた。
「女にここまでさせといて恥をかかすつもりなの?」
もう逃がさないわとばかりに
弘子は太郎に抱きついて唇を重ねてきた。