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背徳は蜜の味
第23章 人妻その二十三 ~生徒の父親と肉体関係~

今夜も夫は帰ってこない。
いや、今夜どころではない国会議員の公設秘書を依頼されてからというもの、ろくにこのマンションの部屋に戻ってきたためしがない。

東大卒で官僚だった頃の方が高給だったけれど、
何をとち狂ったのか、すっかり若い国会議員の女にのぼせ上がってしまって、自ら売り込みに行って今の職に収まった。

あんな一年生議員なんて、次の選挙で落ちるわよ

そんなことを言うと、夫は烈火のごとく京子を叱りつけた。

「君は先生のことを何一つわかっていない!
先生はなあ、そのうち大臣になるかもしれない逸材なんだぞ!」

あそこまで夫を信奉させてしまったのだから、
あの女性議員はたいしたものだと思う。

まさか、男と女の関係?
ふと、そんなことを考えて「ないない」と声に出して否定した。
国会議員としては一期目だけれど、すでに年齢は40代に差し掛かろうとしていたはずだ。
20代の夫とは親子ほどに年齢差があった。

「さて、余計な詮索をしていちゃ時間がもったいないわ」

京子は雑念を捨てて、目の前のプリントの束に目を落とす。
今日、抜き打ちで実施した実力試験の採点をつけなきゃいけなかった。

赤ペンを片手に採点を進めてゆく。
綺麗な文字、汚い文字、
プリントの中でそれぞれの個性が息づいていた。

そして、ふと一人の生徒の解答用紙を手にして
京子の手が止まった。
採点しようがなかった。
だってそれは白紙の答案だったからだ。

「まあ!せめて何か書きなさいよね!」

誰だろうと氏名を確認すると『相川純一』と記入されていた。
『ああ…あの子か…』
確か、ご両親が交通事故に合って、父親の友人宅に居候しているんだっけ…
きっと家庭環境が複雑で、心に闇を持っているのかもしれないと
京子は近々、彼と面談をしてみることにした。


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