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第19章 軽口



 手放しそうになった理性をぎりぎりのところで引き戻して、私は相馬の胸を強く押し返した。

 相馬が顔を上げる。
その頬は、チークの仕上がりよりも絶対に赤くて、息を荒げて私をじっと見つめていて、



 そんな目で、見ないで。

 駄目だってわかっているのに、もっと、もっと――欲しくなってしまう。



「相馬、時間!」

 相馬が腕時計を見て舌打ちをした。
相馬の舌打ちなんてはじめて聞いた。
最初に言った、十分ジャストだった。

相馬はしぶしぶ立ち上がる。

「あとで連絡する」

 しなくていい、話は終わり、と言ってやりたかったけれど……続きを期待する私の本能が、それを阻んだ。

「気をつけて。いってらっしゃい」

「ん。ありがと」



 相馬が会議室を出ていくのを座ったまま目線で追って、扉が閉まった瞬間、私はほっとため息をついた。


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