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第10章 夢想



 夢を見た。



 俺はなぜか固い床に転がされていて、体のあちこちが痛かった。
ここがどこだか定かではなかった。
霧野が俺を上から見下ろしていた。

霧野は微かなオレンジ色の灯りを背にしていて、表情はよく見えなかった。
けれど、それが霧野であることだけは確かだった。
霧野がそこにいることに、俺は違和感も何も感じなかった。
なぜか、霧野だ、とわかって、よかった、と思った。

霧野が俺の頬を指の腹で撫でた。
それから俺の前髪を掻き分けて、額にキスをした。
唇を触れさせるだけの、優しいキスだった。
霧野らしい。

それから、俺の頬にもう一つ。
嬉しい。
霧野からキスしてくれるなんて。

幸せだ。

そうだ、俺は今幸せなんだ。
俺は霧野が好きで、霧野も俺が好きなんだった。
そうだった。



もう何も考えなくていい。


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