この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
天狐あやかし秘譚
第73章 動如雷霆(どうじょらいてい)

「でも、それじゃあ、麻衣ちゃんがこっちにいる限り、まつろわぬ民達は何もできないんじゃ?」
私は首をひねった。条件の3が達成できない。
「いえ・・・よく考えてみてください。例の緋紅という男は、品々物之比礼や足玉を平気で手で持ち、八握剣を使い、道返玉を使って鬼道を渡ってきたんですよ?」
え?まさか・・・
「そうです。おそらく、緋紅は『全ての神宝の適合者』なんです」
そんな・・・。
あの底しれない悪意を持った人物が、使いようによってはたったひとつであったとしても世界を破滅に追い込むことができるほどの力を持つ神宝を全て使いこなせるなんて。
「ま、推測です。
どちらにせよ、土御門様は、今夜、黄泉平坂にて敵を待ち伏せするつもりです。」
「でも、相手だって、それを読んで、今日はこない、ってこともあるんじゃ?
だって、新月って、毎月あるでしょ?」
わざわざ陰陽寮の精鋭たちが揃ってるとわかって来るものだろうか?
「いや、敵は今日、来ざるを得ないのです。
なぜなら、今日を逃せば、私達は全力を持って黄泉平坂周辺に結界を張ります。時間を置けば置くほど、敵は黄泉平坂を開くことができなくなる。私達の態勢が十分に整わない今しかない。そして、そうなれば、必ずあいつが来る」
そうか、黄泉平坂をどうしても開きたければ、今日やるしかない。そして、今日やるとすれば適合者である緋紅が来ることになる。
「土御門様は、最終決戦の場を、黄泉平坂と決められたのです」
瀬良の言葉で、私は、ようやく事態を飲み込むことができた。
そう、まだまだ、事態は予断を許さない。
でも、きっと、みんなでやればうまくいく。
ダリもいる。
この時の私は、まだまだ、楽観的だった。
夜明け前、その時が、一番闇が深いということを、私はよくわかっていなかった。
私は首をひねった。条件の3が達成できない。
「いえ・・・よく考えてみてください。例の緋紅という男は、品々物之比礼や足玉を平気で手で持ち、八握剣を使い、道返玉を使って鬼道を渡ってきたんですよ?」
え?まさか・・・
「そうです。おそらく、緋紅は『全ての神宝の適合者』なんです」
そんな・・・。
あの底しれない悪意を持った人物が、使いようによってはたったひとつであったとしても世界を破滅に追い込むことができるほどの力を持つ神宝を全て使いこなせるなんて。
「ま、推測です。
どちらにせよ、土御門様は、今夜、黄泉平坂にて敵を待ち伏せするつもりです。」
「でも、相手だって、それを読んで、今日はこない、ってこともあるんじゃ?
だって、新月って、毎月あるでしょ?」
わざわざ陰陽寮の精鋭たちが揃ってるとわかって来るものだろうか?
「いや、敵は今日、来ざるを得ないのです。
なぜなら、今日を逃せば、私達は全力を持って黄泉平坂周辺に結界を張ります。時間を置けば置くほど、敵は黄泉平坂を開くことができなくなる。私達の態勢が十分に整わない今しかない。そして、そうなれば、必ずあいつが来る」
そうか、黄泉平坂をどうしても開きたければ、今日やるしかない。そして、今日やるとすれば適合者である緋紅が来ることになる。
「土御門様は、最終決戦の場を、黄泉平坂と決められたのです」
瀬良の言葉で、私は、ようやく事態を飲み込むことができた。
そう、まだまだ、事態は予断を許さない。
でも、きっと、みんなでやればうまくいく。
ダリもいる。
この時の私は、まだまだ、楽観的だった。
夜明け前、その時が、一番闇が深いということを、私はよくわかっていなかった。

