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天狐あやかし秘譚
第75章 生離死絶(せいりしぜつ)

「そもそも、あんさん・・・ホテルん中に直接鬼道、繋げられんかったんやろ?当然やな。あんたが麻衣ちゃん取り戻しに来る可能性、ちゃんと考えて大鹿島に結界張らせてんねん。水公結界・・・呪的な干渉に特化した結界や・・・。外から打ち破れんことはないだろうけど、気づかれないでってのは無理。その段階で、あんさん、諦めりゃよかったんよね。」
ざっ、ざっと地面を蹴り、土御門は緋紅に迫っていく。
「来るか来ないか、五分五分と思ってたけど・・・来よったね。それだけ麻衣が大事なのか・・・それとも、自分の実力にアホほど自信があるか」
土御門と緋紅との距離が3メートルほどにまで縮まる。緋紅自身は、今、立っているのがやっとの状態だ。
ークソ・・・身体が・・・動かないっ・・・!
バリン!
突然、背後の廃ホテルでガラスの割れる音がした。その音で、一瞬、土門、左前、土御門の気がホテルの方に逸れる。
ガラスが割れたのは5階のフロアのようだ。キラキラとしたガラスの破片が空から降ってくるのが見えた。
「なんや!?」
割れたガラスの桟に立っていたのは、麻衣だった。
「お父さん、お母さんに会いに行かなきゃ・・・」
確かに、そう呟いたようだった。
ー来た!
緋紅は麻衣を視野の端に捉えると、最後の力を振り絞って叫んだ。
「シラクモ!!俺を助けろっ!!」
「何!?」
その声に反応し、土門、左前、土御門が周囲を見渡す。シラクモと言えば、疱瘡神事件の際に現れた虫を呼び出す神宝使いだ。
ーちっ!もう一匹おったんかい!
土門の夜魂蝶にも引っかからないほどの高等な隠形術で隠れていたということだし、今の段階でおそらく天乙貴人の領域の外にいる。
ーどこや!?
だが、そこまで思い至り、土御門が領域の外にまで意識を向けたときには、すでに遅かった。緋紅の声が上がったあと、数秒もしないうちに、大量の虫の羽音が領域の周辺に満ちていった。それは黒い奔流のようになって一気に領域に内に流れ込んでくる。
「これは!?」
「な・・・なんなんですかあ!」
「クソ!虫か!?」
ざっ、ざっと地面を蹴り、土御門は緋紅に迫っていく。
「来るか来ないか、五分五分と思ってたけど・・・来よったね。それだけ麻衣が大事なのか・・・それとも、自分の実力にアホほど自信があるか」
土御門と緋紅との距離が3メートルほどにまで縮まる。緋紅自身は、今、立っているのがやっとの状態だ。
ークソ・・・身体が・・・動かないっ・・・!
バリン!
突然、背後の廃ホテルでガラスの割れる音がした。その音で、一瞬、土門、左前、土御門の気がホテルの方に逸れる。
ガラスが割れたのは5階のフロアのようだ。キラキラとしたガラスの破片が空から降ってくるのが見えた。
「なんや!?」
割れたガラスの桟に立っていたのは、麻衣だった。
「お父さん、お母さんに会いに行かなきゃ・・・」
確かに、そう呟いたようだった。
ー来た!
緋紅は麻衣を視野の端に捉えると、最後の力を振り絞って叫んだ。
「シラクモ!!俺を助けろっ!!」
「何!?」
その声に反応し、土門、左前、土御門が周囲を見渡す。シラクモと言えば、疱瘡神事件の際に現れた虫を呼び出す神宝使いだ。
ーちっ!もう一匹おったんかい!
土門の夜魂蝶にも引っかからないほどの高等な隠形術で隠れていたということだし、今の段階でおそらく天乙貴人の領域の外にいる。
ーどこや!?
だが、そこまで思い至り、土御門が領域の外にまで意識を向けたときには、すでに遅かった。緋紅の声が上がったあと、数秒もしないうちに、大量の虫の羽音が領域の周辺に満ちていった。それは黒い奔流のようになって一気に領域に内に流れ込んでくる。
「これは!?」
「な・・・なんなんですかあ!」
「クソ!虫か!?」

