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天狐あやかし秘譚
第83章 一業所感(いちごうしょかん)
☆☆☆
ダリの目が開く。
綾音の願いに呼応して、妖力が蘇る。傷がふさがり、目に光が宿った。

「綾音・・・また、主に救われた」

『骸』となった体を壊さぬよう、ダリがそっと綾音を抱きしめる。衣に腐汁がつくのも、死臭が鼻を突くのも、蛆が身体に移ろうとも、構わなかった。

「お主の願い・・・しかと受けとったぞ」

ダリは立ち上がる。その身体が光に包まれた。
綾音がその姿を見上げる。その目には涙が浮かんでいた。言葉はなくても、それだけで全て、伝わってきた。

『ダリ・・・お願い・・・』

ああ、任せておけ。

「我は・・・天狐ダリ・・・あのような者に、遅れを取るものか」

凄まじい力がその身体から迸る。手に握った天魔反戈が光に包まれ、往時の輝きを取り戻していた。

「久方の 天地(あめつち)をなす 奇しき玉水
 ころころと 隈無(くまな)くとよめ 神漏岐(かむろぎ)の音」

カダマシの力を圧した術。清涼なる音と光で全ての歪みを正すダリの奥義。
その手にあるは、『天魔反戈』(あまのかえしのほこ)、またの名を『天の沼矛』(あまのぬぼこ)

日本創生の秘技を成し遂げた世界最強の退魔の槍

ダリの妖力と槍の神力が合わさり、創世期に響き渡った清らかな音と光が放たれる。それは周囲にある淀んだ瘴気を瞬く間に一掃していった。

「な・・・なんだ・・・!」

その光と音に煽られ、イザナミは、己の身体が浮遊する感覚を味わっていた。依代にしかと根付いたはずの自らの魂が引き剥がされ、黄泉の国へと押し返されそうとしているのだ。

ーなぜだ!?負けるはずがない
 あやかしごときが、我を祓えるはずがない!

必死になって依代にしがみつこうとするが、引き剥がす力の強さは想像を超えていた。最初は軽く浮き上がっていただけだったが、次第にイザナミの霊体は大きく引き離され、それに伴って依代となっていた麻衣の体が現実世界に顕現し始めた。

ーなぜだ?・・・なぜこのようなことが!

イザナミはひどく狼狽していた。そして、戸惑いながらも、かつて己が永遠と誓った伴侶とともに使った槍を構えるあやかしをキッと睨みつけていた。彼女が神の意を持って睨みつけたにも関わらず、あやかしは臆することなくまっすぐに見つめ返してくる。その瞳には一片の淀みもなかった。
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