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天狐あやかし秘譚
第102章 一気呵成(いっきかせい)
くっくっく・・・と、さも可笑しそうに獣は嗤う。その傍らで突っ込んでくる佐那を適当に手や尻尾で払い除け続ける。まるで大人と子どもの戦いだ。勝負にすらなっていない。
「うっとおしいなあ・・・あゝ、そうか、そうか・・・順番を変えよう・・・
お前らが一番、絶望する・・・そうだなぁ、その女か?その女を先に喰うのが・・・一番・・・か?」
ギロリと獣が私の方・・・いや、私の後ろの女の子を見る。
「お前だ・・・あゝ・・・名を涼華、と云ったな?」
奇妙に顔を歪ませて嗤った獣の目が、ぬらりと怪しい光を放つ。
「来い・・・涼華」
え?
不意に背中にしがみついていた女の子・・・涼華の身体が離れるのを感じた。涼華は
ふらふらと立ち上がると、私の横を通り抜けて2メートルほど先にいる獣の側まで歩いていってしまう。
な・・・なんで!?
突然、脈絡なく起きた出来事を前に、私は身動きを取ることができなかった。涼華の後ろ姿を呆然と見つめていると、そのうなじあたりがぼわっと赤く光っているのが見えた。それは何らかの呪的なものに感じられる。
なにかの術で操られている・・・の?
先程まであれほど獣を恐れていた涼華が、むしろ自らを差し出すように歩いていく光景は、私をゾッとさせた。
そうなんだ、あの獣は最初から、涼華を追いかける必要なんてなかったんだ。
光が弱点とか、どこかに出口がとか、そんなこと、全然関係なかったんだ。
端から、追いかけている振りをしてただけで、私たちに『逃げられるかも』と思わせて、ただいたぶってただけで・・・それで、それで・・・恐怖に歪んだ顔を楽しんで・・・っ!
「ぎゃ!」
何度目かの突撃をした佐那姫が、獣の腕に弾かれ、私の傍らに吹き飛ばされてきた。倒れ込んだ彼女の身体はすでに向こう側が見える程に透けてしまっていた。
佐那・・・佐那!
佐那を見る、そして、涼華を。
獣は涼華をその懐に抱くようにしている。わざと私たちの方に涼華を向かせ、その肩に顎を乗せニヤニヤと挑発するように笑っている。当の涼華の目は完全に理性の光を失い、どこを見ているかすらわからない様子だった。
「うっとおしいなあ・・・あゝ、そうか、そうか・・・順番を変えよう・・・
お前らが一番、絶望する・・・そうだなぁ、その女か?その女を先に喰うのが・・・一番・・・か?」
ギロリと獣が私の方・・・いや、私の後ろの女の子を見る。
「お前だ・・・あゝ・・・名を涼華、と云ったな?」
奇妙に顔を歪ませて嗤った獣の目が、ぬらりと怪しい光を放つ。
「来い・・・涼華」
え?
不意に背中にしがみついていた女の子・・・涼華の身体が離れるのを感じた。涼華は
ふらふらと立ち上がると、私の横を通り抜けて2メートルほど先にいる獣の側まで歩いていってしまう。
な・・・なんで!?
突然、脈絡なく起きた出来事を前に、私は身動きを取ることができなかった。涼華の後ろ姿を呆然と見つめていると、そのうなじあたりがぼわっと赤く光っているのが見えた。それは何らかの呪的なものに感じられる。
なにかの術で操られている・・・の?
先程まであれほど獣を恐れていた涼華が、むしろ自らを差し出すように歩いていく光景は、私をゾッとさせた。
そうなんだ、あの獣は最初から、涼華を追いかける必要なんてなかったんだ。
光が弱点とか、どこかに出口がとか、そんなこと、全然関係なかったんだ。
端から、追いかけている振りをしてただけで、私たちに『逃げられるかも』と思わせて、ただいたぶってただけで・・・それで、それで・・・恐怖に歪んだ顔を楽しんで・・・っ!
「ぎゃ!」
何度目かの突撃をした佐那姫が、獣の腕に弾かれ、私の傍らに吹き飛ばされてきた。倒れ込んだ彼女の身体はすでに向こう側が見える程に透けてしまっていた。
佐那・・・佐那!
佐那を見る、そして、涼華を。
獣は涼華をその懐に抱くようにしている。わざと私たちの方に涼華を向かせ、その肩に顎を乗せニヤニヤと挑発するように笑っている。当の涼華の目は完全に理性の光を失い、どこを見ているかすらわからない様子だった。

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