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天狐あやかし秘譚
第104章 【第20話 ヤンデレ】一途一心(いちずいっしん)
ペラリと明日香が手元の用紙をめくる。
「そうですね・・・目撃者によると、白いワンピースを着た大柄な女が、夕日の中、ふらふらと自分の家に向かって歩いてきていた・・・とのことです。最初、目撃者は普通の人間だと思っていたようですが、そのワンピースに血しぶきのようなものが見て取れたこと、そして、何より、顔にかかった髪の毛の隙間から見えた目が・・・」
「目が?」
「洞・・・つまり、空洞だった・・・ということでした」
その言葉に九条がひゅーっと口笛を軽く吹き鳴らし、宝生前は顎に指を当てて考え込む。
「単なる幽霊じゃないってことね?」
九条が肩肘をテーブルにつき、楽しそうに言った。
通常の幽霊は生前の姿を保存していることが多い。目の部分が洞穴のようになっているというのは、偶然にもよほど特殊な死に方をしたか、はたまた人工的に作り出された怪異・・・すなわち『呪い』である可能性が高い、というわけだ。
「その後、どうなったのですか?」
宝生前が続きを促すと、明日香が更にレポートを読み上げる。
「目撃者自身はどういうわけかそれが自身の家を目指してきていたということが分かったようなんです。そして、目撃者が怪異を確認した直後、それは突然踵を返して夕暮れの町に消えていったそうなんです。まるで、目撃者の視線に気づいて、引き返したかのように。そのあまりに異様な光景から、思い悩んだ目撃者が友人に相談をし、偶然にもその友人がかつて陰陽寮が関与した怪異事件に関係していたことから、寮に相談があった・・・というのが今回の依頼の経緯です」
「宝生前・・・どう思いますか?」
大鹿島が今回の件について、宝生前の見解を聞きたがるのももっともだった。
祭部において経験が長く、かつ大学でも教鞭をとっている宝生前は祭部の頭脳的な存在である。こういう時、一番頼りになるのだ。
「目がないにも関わらず、当該目撃者の家に向かってきたと思われる点、『見る』という行為が何らかの影響を及ぼした点から、確かに『呪詛』である可能性が高いですね。単に驚かすだけ、というよりは、明確な目的があるように感じます」
「正体については?」
「・・・文献を当たってみないとなんとも・・・。すぐは分かりかねます。」
宝生前らしい慎重な物言いだなと九条は思った。
「そうですね・・・目撃者によると、白いワンピースを着た大柄な女が、夕日の中、ふらふらと自分の家に向かって歩いてきていた・・・とのことです。最初、目撃者は普通の人間だと思っていたようですが、そのワンピースに血しぶきのようなものが見て取れたこと、そして、何より、顔にかかった髪の毛の隙間から見えた目が・・・」
「目が?」
「洞・・・つまり、空洞だった・・・ということでした」
その言葉に九条がひゅーっと口笛を軽く吹き鳴らし、宝生前は顎に指を当てて考え込む。
「単なる幽霊じゃないってことね?」
九条が肩肘をテーブルにつき、楽しそうに言った。
通常の幽霊は生前の姿を保存していることが多い。目の部分が洞穴のようになっているというのは、偶然にもよほど特殊な死に方をしたか、はたまた人工的に作り出された怪異・・・すなわち『呪い』である可能性が高い、というわけだ。
「その後、どうなったのですか?」
宝生前が続きを促すと、明日香が更にレポートを読み上げる。
「目撃者自身はどういうわけかそれが自身の家を目指してきていたということが分かったようなんです。そして、目撃者が怪異を確認した直後、それは突然踵を返して夕暮れの町に消えていったそうなんです。まるで、目撃者の視線に気づいて、引き返したかのように。そのあまりに異様な光景から、思い悩んだ目撃者が友人に相談をし、偶然にもその友人がかつて陰陽寮が関与した怪異事件に関係していたことから、寮に相談があった・・・というのが今回の依頼の経緯です」
「宝生前・・・どう思いますか?」
大鹿島が今回の件について、宝生前の見解を聞きたがるのももっともだった。
祭部において経験が長く、かつ大学でも教鞭をとっている宝生前は祭部の頭脳的な存在である。こういう時、一番頼りになるのだ。
「目がないにも関わらず、当該目撃者の家に向かってきたと思われる点、『見る』という行為が何らかの影響を及ぼした点から、確かに『呪詛』である可能性が高いですね。単に驚かすだけ、というよりは、明確な目的があるように感じます」
「正体については?」
「・・・文献を当たってみないとなんとも・・・。すぐは分かりかねます。」
宝生前らしい慎重な物言いだなと九条は思った。

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