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天狐あやかし秘譚
第12章 鬼哭啾啾(きこくしゅうしゅう)
☆☆☆
「さーて!なんっでも好きなもんくーてぇな!」
土御門と名乗った男が両手を広げる。

はあ・・・。なんだ、この妙なテンションは。
宮内庁の人間と聞いていたが、とてもじゃないけどそうは見えない、派手派手しい格好をしている。赤やオレンジのサイケデリックな柄の半袖ワイシャツに、カーキのハーフパンツである。およそ公務員には見えない。

まあ、いいや。

一応メニューを見てみる。

しっかし、さすがホテルのカフェ。お高い!
ケーキセット3000円!?
コーヒーだけでも1500円!

な・・・なんじゃこりゃあ!
そう、私達は、土御門に警察署から連れ出され、近くのホテルのカフェに来ていたのだった。

「まあ、こんなんしかないけど、遠慮せずになんでも注文しーや。わいが奢るでぇ」
と言ってくれたのはいいけれど、あまりのお高さに目を見張る。

「土御門様?これは経費では落ちませんよ?」
土御門の横に控えてる、スーツを着た美しい女性がピシャリと言う。まるでできる秘書、みたいな?
「わーてるがな、瀬良ちゃん。これはわいのポケットマネーや」
どうやら女性の方は瀬良というらしい。それにしても、ここをこの土御門という人はポケットマネーから出す気なの?・・・なら、なおさらあまり高いものはやめておいたほうがいいのだろうか・・・。

そんな私の思いとは裏腹に、ちらっと見ると芝三郎はアフタヌーンティセット5500円のページを熱心に眺めているし、清香ちゃんはスペシャルケーキ2500円の写真をうっとりと見ていた。

ダリは・・・。あまり関心がないようだが、さっきから土御門が日本酒がないか飲み物カウンターの人に聞いている。

なんか、この状況で私だけ「コーヒー」とか言うわけにもいかない気がする。
えーい、この際、贅沢しちゃる!
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