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天狐あやかし秘譚
第12章 鬼哭啾啾(きこくしゅうしゅう)
「ぜーんぜん。だって、わいら、見てましたもん。ま、正確に言えばわいの『シキ』が見てましたんで、あんさんらが無実っちゅーことは先刻承知。だけど、こっちも公務員やさかい、正式な手続き踏まんと身柄引き受けられへんので、少々迎えに行くの時間かかってん。堪忍やで。」
「いかがですか?綾音様」
瀬良が話を戻す。
え?いかがかって・・・そりゃ就職口も探していたけど・・・いきなりそんな宮内庁だなんて・・・。あまりにも突然過ぎる。私は逡巡してしまう。

「綾音はんにとって、悪い話やないと思うで?陰陽寮は宮内庁所属、つまりは国家公務員。しかも陰陽師待遇やから給与もバーンと出るし、希望すれば寮付属の家を住居に提供もできっで?それに、今回は曲がり神、狂骨の祓えに寄与したちゅうことで特別法の適用もあって、まあ、つまりはボーナスみたいなんも払えるってわけや。これで借金もチャラ。一気に人生逆転、大チャンスやで?」

な・・・なんですと!?
現金なもので、お金の話が出て、一気に気持ちがぐらっとくる。

「ち・・・ちなみにお仕事というのは?」
「はい、仕事につきましては、綾音様の能力に応じてになりますが、これまでの実績から退魔、ということになると思います。陰陽部門祓衆(はらえしゅう)に所属していただくことになるかと。」

はらえしゅう?

「まあ、妖怪出てきたらぶっ飛ばしてもらえやええねん。あんさん、得意やろ?」
ちらっと土御門がダリを見る。ダリは私を見た。

・・・要するに、妖怪退治をする代わりに給料と住居が?
ど・・・どうしよう・・・。

「失礼ながら、迷う余地はないかと・・・。」

あう・・・そうなのだ。私には多分、選択肢はない。ないのだけれども・・・。

「ちょっと・・・考えさせてください・・・」
やっぱり即断できない。あまりにも話が非現実的過ぎる。
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