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天狐あやかし秘譚
第19章 拈華微笑(ねんげみしょう)

「ずっと、この家を守ろうとしていたの?」
しゃがんで目線を合わせる。じりっと近づいてみた。
木霊はすっと顔を伏せる。私には、それが頷いたように視えた。
どうしよう・・・ここから、何を言えば?
あなたの待っている人は、帰ってこないですよ・・・。
って、そんなこと、言えない。
何も言えずに、沈黙だけが流れた。
「必ず・・・戻ると・・・言いました」
言って彼女は顔を少しだけ上げる。
「あの人は、私を抱きしめてくれました」
そう、感じた。私も感じた。
抱きしめられたときに、あなたが感じた、『温かい』という感覚。多分、あれは生まれて初めて感じた、幸福感・・・。
「待たなければいけません・・・。守らなければ、いけません」
駄目だ・・・多分、ここでいくら話しても、この人の気持ちを変えることなんて出来ない。ずっと、ずっとこの異界で、一人で待ち続けることになる。
だったら・・・だったら・・・。
私は一つの決意をした。
「だったら・・・、私と一緒に、迎えに行こう。あなたの・・・愛しい人を」
木霊が顔を上げた。
その目は両方とも、澄んだ美しい乙女の瞳だった。
しゃがんで目線を合わせる。じりっと近づいてみた。
木霊はすっと顔を伏せる。私には、それが頷いたように視えた。
どうしよう・・・ここから、何を言えば?
あなたの待っている人は、帰ってこないですよ・・・。
って、そんなこと、言えない。
何も言えずに、沈黙だけが流れた。
「必ず・・・戻ると・・・言いました」
言って彼女は顔を少しだけ上げる。
「あの人は、私を抱きしめてくれました」
そう、感じた。私も感じた。
抱きしめられたときに、あなたが感じた、『温かい』という感覚。多分、あれは生まれて初めて感じた、幸福感・・・。
「待たなければいけません・・・。守らなければ、いけません」
駄目だ・・・多分、ここでいくら話しても、この人の気持ちを変えることなんて出来ない。ずっと、ずっとこの異界で、一人で待ち続けることになる。
だったら・・・だったら・・・。
私は一つの決意をした。
「だったら・・・、私と一緒に、迎えに行こう。あなたの・・・愛しい人を」
木霊が顔を上げた。
その目は両方とも、澄んだ美しい乙女の瞳だった。

