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天狐あやかし秘譚
第22章 【第7話 ホシガリ様】異聞奇譚(いぶんきたん)

長女はその崖の上であらん限りの力で叫んだ。
「なぜ妾のものにならない!」
以来、長女は心を荒ませ、狂ったように暴れ、自らの母を、そして長者である父を、その使用人をもすべて殺してしまった。何もかも失った娘は、若者が自分を選ばなかったのは、自分に富が、美しさが、権力が足りないからだと叫び狂い、山にこもり、最後は鬼と化してしまった。
こうして鬼となった娘は、夜ごと周囲の村々に現れ、金品があれば金品を奪い、美しい男がいればそれを犯し、若い女がいればその血肉を貪った。
そんなある日、この地を治める大名が島にやってきた。鬼と化した娘はその大名の権力をも奪い取ろうと襲いかかる。しかし、さすがは大名。そのお付のものの強さは凄まじかった。戦いの末、お付きの侍に返り討ちにあった鬼は、その数奇な人生を終えることになった。
この後、この娘を不憫と思った村で二番目の名代だった浮内の祖先は、鬼と化した娘の霊を「ホシガリ様」として家に祀ることとした。そして、丁重に祀られた娘はいつしか浮内家に福をもたらす氏神となった。
このホシガリ様を慰めるために、当時娘が愛した村の若者の代わりとして浮内の分家の中から『ホシガリ様が選んだ』とされる若者を本家に輿入れさせ、ホシガリ様との婚姻を行う儀式が始まった、ということである。
「なぜ妾のものにならない!」
以来、長女は心を荒ませ、狂ったように暴れ、自らの母を、そして長者である父を、その使用人をもすべて殺してしまった。何もかも失った娘は、若者が自分を選ばなかったのは、自分に富が、美しさが、権力が足りないからだと叫び狂い、山にこもり、最後は鬼と化してしまった。
こうして鬼となった娘は、夜ごと周囲の村々に現れ、金品があれば金品を奪い、美しい男がいればそれを犯し、若い女がいればその血肉を貪った。
そんなある日、この地を治める大名が島にやってきた。鬼と化した娘はその大名の権力をも奪い取ろうと襲いかかる。しかし、さすがは大名。そのお付のものの強さは凄まじかった。戦いの末、お付きの侍に返り討ちにあった鬼は、その数奇な人生を終えることになった。
この後、この娘を不憫と思った村で二番目の名代だった浮内の祖先は、鬼と化した娘の霊を「ホシガリ様」として家に祀ることとした。そして、丁重に祀られた娘はいつしか浮内家に福をもたらす氏神となった。
このホシガリ様を慰めるために、当時娘が愛した村の若者の代わりとして浮内の分家の中から『ホシガリ様が選んだ』とされる若者を本家に輿入れさせ、ホシガリ様との婚姻を行う儀式が始まった、ということである。

