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天狐あやかし秘譚
第30章 愛別離苦(あいべつりく)

「おい!次の連絡で運転代われよ」
運転席の男が言う。こいつも自分の同期で同じ陰陽生だ。この任務は二人にとってチャンスであるとも言える。
「分かったよ」
応えたとき、ベチっと妙な音がした。
ん?と思って、フロントガラスを見ると、そこにバッタのような虫がへばりつくように潰れていた。
こんな季節に?バッタ?
そう思っている内に、もう一つ、バチッと音がして、別のところにバッタがへばりつく。更にまた音が鳴り、別の虫が・・・。
バチバチバチバチバチ
バチバチバチバチバチ
あっという間に無数の虫がフロントガラスに飛び込み、破裂し、へばりついてきた。
「なんだこれ!!」
運転席の男も慌てる。慌ててブレーキを踏むが、ぎゅるるると車がスピンをしてしまい、うまく止まらない。
うわああ!!!
スピンした車は山道のガードレールを突き破り、崖下めがけて真っ逆さまに落ちていく。
ぼーん!
遥か崖下でクラッシュし、燃え上がる車体。突き破られたガードレールのそばに立ち、そのオレンジの光を見つめている男がいた。
その髪の毛は真っ白であり、ツンツンと立っている。アルビノなのだろうか、身体のあらゆる色素が薄い男だった。もし、かつて女怪事件の時、全ての人がはけたマンションを見ていた人がいたとしたら、そのとき、そこから不思議な玉を持ち去ったのと同じ男だと気づくだろう。
男の名は「シラクモ」と言った。
男の周りには、小さなバッタがウヨウヨと這い回っている。その身体にもまとわりついているが、一向に気にしている様子はない。
「あーあ、ダメだよ。虫まみれなんだからさ、ブレーキかけたら滑っちゃうよね」
シラクモが目を向けると、道路にも無数のバッタがひしめいていた。
「じゃあ、回収しますか。神宝・・・品々物之比礼(くさぐさのもののひれ)っと」
シラクモがふわりと崖下に飛び降りる。その足元に虫たちが集まり、足場を作る。それを踏みしめ、また下に、下に、まるで空中に虫たちが作った階段を降りるかのようにして下っていった。
運転席の男が言う。こいつも自分の同期で同じ陰陽生だ。この任務は二人にとってチャンスであるとも言える。
「分かったよ」
応えたとき、ベチっと妙な音がした。
ん?と思って、フロントガラスを見ると、そこにバッタのような虫がへばりつくように潰れていた。
こんな季節に?バッタ?
そう思っている内に、もう一つ、バチッと音がして、別のところにバッタがへばりつく。更にまた音が鳴り、別の虫が・・・。
バチバチバチバチバチ
バチバチバチバチバチ
あっという間に無数の虫がフロントガラスに飛び込み、破裂し、へばりついてきた。
「なんだこれ!!」
運転席の男も慌てる。慌ててブレーキを踏むが、ぎゅるるると車がスピンをしてしまい、うまく止まらない。
うわああ!!!
スピンした車は山道のガードレールを突き破り、崖下めがけて真っ逆さまに落ちていく。
ぼーん!
遥か崖下でクラッシュし、燃え上がる車体。突き破られたガードレールのそばに立ち、そのオレンジの光を見つめている男がいた。
その髪の毛は真っ白であり、ツンツンと立っている。アルビノなのだろうか、身体のあらゆる色素が薄い男だった。もし、かつて女怪事件の時、全ての人がはけたマンションを見ていた人がいたとしたら、そのとき、そこから不思議な玉を持ち去ったのと同じ男だと気づくだろう。
男の名は「シラクモ」と言った。
男の周りには、小さなバッタがウヨウヨと這い回っている。その身体にもまとわりついているが、一向に気にしている様子はない。
「あーあ、ダメだよ。虫まみれなんだからさ、ブレーキかけたら滑っちゃうよね」
シラクモが目を向けると、道路にも無数のバッタがひしめいていた。
「じゃあ、回収しますか。神宝・・・品々物之比礼(くさぐさのもののひれ)っと」
シラクモがふわりと崖下に飛び降りる。その足元に虫たちが集まり、足場を作る。それを踏みしめ、また下に、下に、まるで空中に虫たちが作った階段を降りるかのようにして下っていった。

