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天狐あやかし秘譚
第34章 【第9話 姑獲鳥】報恩謝徳(ほうおんしゃとく)
「嘘・・・嘘を・・・嘘をつくなああ!!!」

環の母が拙者に掴みかかってくる。あまりにも唐突なことに身体を翻す暇もなかった。その隙をつかれ、喉笛を両手で握りつぶさんばかりに掴まれる。

「環・・・環は・・・」

万力のような力でぐいぐいと締め上げてくる。
何を・・・するんだ!
術を発動しようともしたが、息ができず、朦朧としてそれも叶わない。このままでは本当に絞め殺されてしまう・・・。

目を血走らせ、涙を流し、歯を食いしばった環の母の姿は、まるで鬼女さながらだった。そんな女の腕をほどこうと、環が後ろから引っ張っている。

環・・・いつの間にこちらに渡ってきたのだ?

『やめて!やめて!ママ!やめて!!』

しかし、環の力が弱いのか、一向に女の手が緩むことはない。それに、女は環に全く気づいていない様子ですらある。

頭に血が廻らなくなったせいか、周囲の景色が霞んでいった。環の姿も・・・霞んで・・・ああ・・・そうか・・・そうだったのか・・・。

拙者は、間違えていたのか・・・。

一旦かすみ、再度焦点が合い、はっきりと視えた環の姿は、頭が半分轢き潰され、眼球がはみ出し、腕もちぎれかけていた。白だと思っていた衣装は大半が血に染まり、足はあらぬ方向に曲がっていた。それは死に瀕した者の、無惨な姿だった。

そうか・・・お前が・・・お前のほうが・・・

「たまき・・・たまきはああ!!死んだんだあああ!」

死者だったのか・・・。

ぐいっと喉を締め付ける手に力が込められる。爪が首の肉にめり込む。息ができず、急速に四肢から力が抜ける。

『誰か!!誰か・・・!芝三郎を!助けて!』

環よ・・・主は優しいの・・・。
拙者は失敗したのだぞ。絵も渡せぬ、言葉も伝えられぬ。
お主の母君を怒らせてしまった。なのに・・・なのに、己のことだけ考えれば良いものの・・・

『いやー!!!誰かーっ!!』

大きく叫ぶ環の声の向こう、薄れゆく意識の中、遠くで拙者の名を呼ぶ声が聴こえた気がした。あれは・・・綾音・・・か?

その思いを最後に、拙者の魂は闇に呑まれていった。
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