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天狐あやかし秘譚
第35章 真実一路(しんじついちろ)

ああ、そうだよね・・・芝三郎・・・。
最期の最期で、環ちゃん、お母さんの笑顔が見られて、良かったよね。
それに、お母さんにも、環ちゃんの本当の気持ちが伝わっていたなら・・・。
あの下手なお芝居の問いかけみたいに、すぐに簡単に吹っ切ることは難しいだろうし、そもそも、吹っ切れるものでもないのかもしれない。それでも、環ちゃんが願ったように、お母さんには幸せになってほしい。そんな日が、来てほしいよ。
「まま・・・どうしたの?」
ちょっと、涙が出てきてしまったのを、清香ちゃんが心配してくれる。ううん、大丈夫、なんでもないよ、と請け合う。
芝三郎がぐいと涙を拭いて振り返る。その手の中には、ぎゅっと環ちゃんの魂の込められた金人形を握りしめていた。
「そろそろタイムアップだ・・・ほら、常世に送るから・・・こっちによこせ」
御九里が言う。相変わらずの、黒の革ジャンに痛々しいほどの耳、鼻ピアスという、どこぞの売れないロックシンガーのような出で立ちだ。一見、ぶっきらぼうに言っているが、多分、芝三郎に気を使っているのだろう。無理やり取り上げるようなことはしなかった。
御九里を見上げ、芝三郎は、もう一度だけ人形をぎゅっと抱きしめて、そっと彼に手渡した。金人形を受け取ると、御九里はそれを両手の間に挟んだ。
「御九里・・・何をしているの?」
私の顔を見上げて、清香ちゃんが言う。そうだ・・・本来は、清香ちゃんもこうして常世に送られるはず、だったんだっけ?
だったら、環ちゃんも・・・。そう思いかけて私は頭を振った。
ダメだ・・・違う。清香ちゃんには実体があり、その実体を支える魂の力が十分ある。でも、環ちゃんにはそれがないのである。やっぱり、彼女は常世に送られなければならない。それが、自然の摂理。彼女や彼女の母親が受け入れなくてはいけない『運命』なのだ。
最期の最期で、環ちゃん、お母さんの笑顔が見られて、良かったよね。
それに、お母さんにも、環ちゃんの本当の気持ちが伝わっていたなら・・・。
あの下手なお芝居の問いかけみたいに、すぐに簡単に吹っ切ることは難しいだろうし、そもそも、吹っ切れるものでもないのかもしれない。それでも、環ちゃんが願ったように、お母さんには幸せになってほしい。そんな日が、来てほしいよ。
「まま・・・どうしたの?」
ちょっと、涙が出てきてしまったのを、清香ちゃんが心配してくれる。ううん、大丈夫、なんでもないよ、と請け合う。
芝三郎がぐいと涙を拭いて振り返る。その手の中には、ぎゅっと環ちゃんの魂の込められた金人形を握りしめていた。
「そろそろタイムアップだ・・・ほら、常世に送るから・・・こっちによこせ」
御九里が言う。相変わらずの、黒の革ジャンに痛々しいほどの耳、鼻ピアスという、どこぞの売れないロックシンガーのような出で立ちだ。一見、ぶっきらぼうに言っているが、多分、芝三郎に気を使っているのだろう。無理やり取り上げるようなことはしなかった。
御九里を見上げ、芝三郎は、もう一度だけ人形をぎゅっと抱きしめて、そっと彼に手渡した。金人形を受け取ると、御九里はそれを両手の間に挟んだ。
「御九里・・・何をしているの?」
私の顔を見上げて、清香ちゃんが言う。そうだ・・・本来は、清香ちゃんもこうして常世に送られるはず、だったんだっけ?
だったら、環ちゃんも・・・。そう思いかけて私は頭を振った。
ダメだ・・・違う。清香ちゃんには実体があり、その実体を支える魂の力が十分ある。でも、環ちゃんにはそれがないのである。やっぱり、彼女は常世に送られなければならない。それが、自然の摂理。彼女や彼女の母親が受け入れなくてはいけない『運命』なのだ。

