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天狐あやかし秘譚
第40章 一殺多生(いっさつたしょう)

「名越はん・・・あんさん、もうこっちの正体、知ってんのとちゃいます?」
土御門が膝をついて、名越と視線を合わせる。すでに何度かは連絡をしていると言っていたが、それはあくまでも刑事として、だったようだ。しかし、土御門は名越がすでに自分たちを刑事ではないと知っていると言った。
何を根拠に?
「自分、この事態の原因・・・知ってんのやろ?・・・だから、こんなとこで神妙にしてるんとちゃいますの?」
土御門の言葉にビクリと名越の肩が震える。目を見開き、うつむく様子は、『そのとおりです』と言っているようなものだ。しかし、彼は首を振った。
「し・・・知らない。急に村人が人を襲うようになったんで、隠れてたんだ」
「ほんまに?」
「あ・・ああ・・・わかるわけがない」
あくまでもシラを切るつもりのようだ。
「あっそ・・・。じゃあ、一応言うけど、わいらは刑事やなくて、宮内庁の職員や。怪異を祓う者。ここにおるはずの、疱瘡神を殺しに来たんや・・・。」
え?と私は思った。
普通、土御門たち陰陽師は怪異を『祓う』とか『回向する』などと言う。『殺す』などと表現するのは聞いたことがない。
「あんさんは知らんいうけど、疱瘡神を野放しにしとったら、日本中で何万人と人が死ぬんやで?さっさと殺さんと・・・なあ・・・。ま、知らんならしゃーない。この家には多分、疱瘡神についての資料があるはずや。それ、見せてもらうで・・・」
ちなみに、と、土御門が説明するには、法的に怪異現象が起きている際には陰陽寮の職員は超法規的に家宅捜索をする権限を有している、とのことだった。
「それじゃあ、瀬良ちゃん、始めよか」
ぱちりと瀬良が部屋の明かりを点ける。別に電気が来てないわけではないようだ。
それから、土御門と瀬良は二手に分かれて屋敷の中の捜索に行った。私はなんとなく、瀬良についていく。
「あの人、あそこに置いといていいんですか?」
どんなに鈍い人でも気づくと思うが、あの人は『疱瘡神』がどこにいるか知っている。こっそり、逃げ出してしまったら困るのではないだろうか?
「いいんです。あれ、土御門様わざとですから」
瀬良が言うには、土御門は名越をわざと煽り、自分からボロを出すように仕向けたのだという。こうして席を外したのも彼が動きやすくするため・・・だというのだ。
土御門が膝をついて、名越と視線を合わせる。すでに何度かは連絡をしていると言っていたが、それはあくまでも刑事として、だったようだ。しかし、土御門は名越がすでに自分たちを刑事ではないと知っていると言った。
何を根拠に?
「自分、この事態の原因・・・知ってんのやろ?・・・だから、こんなとこで神妙にしてるんとちゃいますの?」
土御門の言葉にビクリと名越の肩が震える。目を見開き、うつむく様子は、『そのとおりです』と言っているようなものだ。しかし、彼は首を振った。
「し・・・知らない。急に村人が人を襲うようになったんで、隠れてたんだ」
「ほんまに?」
「あ・・ああ・・・わかるわけがない」
あくまでもシラを切るつもりのようだ。
「あっそ・・・。じゃあ、一応言うけど、わいらは刑事やなくて、宮内庁の職員や。怪異を祓う者。ここにおるはずの、疱瘡神を殺しに来たんや・・・。」
え?と私は思った。
普通、土御門たち陰陽師は怪異を『祓う』とか『回向する』などと言う。『殺す』などと表現するのは聞いたことがない。
「あんさんは知らんいうけど、疱瘡神を野放しにしとったら、日本中で何万人と人が死ぬんやで?さっさと殺さんと・・・なあ・・・。ま、知らんならしゃーない。この家には多分、疱瘡神についての資料があるはずや。それ、見せてもらうで・・・」
ちなみに、と、土御門が説明するには、法的に怪異現象が起きている際には陰陽寮の職員は超法規的に家宅捜索をする権限を有している、とのことだった。
「それじゃあ、瀬良ちゃん、始めよか」
ぱちりと瀬良が部屋の明かりを点ける。別に電気が来てないわけではないようだ。
それから、土御門と瀬良は二手に分かれて屋敷の中の捜索に行った。私はなんとなく、瀬良についていく。
「あの人、あそこに置いといていいんですか?」
どんなに鈍い人でも気づくと思うが、あの人は『疱瘡神』がどこにいるか知っている。こっそり、逃げ出してしまったら困るのではないだろうか?
「いいんです。あれ、土御門様わざとですから」
瀬良が言うには、土御門は名越をわざと煽り、自分からボロを出すように仕向けたのだという。こうして席を外したのも彼が動きやすくするため・・・だというのだ。

