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天狐あやかし秘譚
第46章 屋烏之愛(おくうのあい)
『ひい!』

私はこの時初めて恐怖を覚えた。お兄ちゃんが見知らぬ『ナニカ』になってしまった・・・そう感じたのだ。明かりの影になりどす黒くなった顔を見て、私の恐怖は最高潮に達した。

じわわわわ・・・

体に力が入らず、そのままおしっこが漏れてしまう。生暖かい感触が広がり、それとともに嗚咽が口から漏れる。

兄のベッドの上で排尿してしまった罪悪感と、恐怖と、悲しさとで頭がぐちゃぐちゃに混乱していた。どうして・・・どうしてこんなひどいことするの!?

『真白・・・真白ぉ・・・!真白ぉ・・・』

ぽたりと私のお腹に雫が垂れた。
すぐにまた、ぽたり・・・。
それはとめどなくあふれるお兄ちゃんの涙だった。

泣いている・・・泣いてる。

『死・・・死にたくない・・・死にたくないよぉ・・・』

それは、見知らぬナニカでなんかじゃなかった。ただ、一人の苦しんでいる男の子。間違いなく、私のお兄ちゃんだった。

お兄ちゃんが苦しんでいる。

もし、私の体を触って、それが和らぐなら・・・。そう思うと、体からフッと変な力が抜けていった。

『ひやああ!に・・・兄様!』

私の体の力が抜けたのを悟ったのか、お兄ちゃんは私の股の部分に再び舌を這わせてきた。

今、おしっこしちゃったばっかりなのに!汚いよ!

そう思ったが、止めることは出来なかったし、しなかった。心の何処かで、もう、この行為を受け入れようという覚悟みたいなのが決まったのだと思う。

ふわっと足を自分から開いていた。そうすると、お兄ちゃんの舌がお股の中にグニニっと入ってきてしまう。生暖かいものが自分の体の中で蠢く感触は今まで味わったことがなく、奇妙でありながらも、頭がふわふわするほど・・・気持ちいいものだった。

『ぐうううああああああ!いいい・・・ひぃいい!!!』

私は奇妙な声を上げてしまう。自分の口から出たとは思えないほどの甲高い声。腰が自然と動き出してしまう。腰の奥のムズムズとした妙な感覚が次第次第に大きく膨れ、爆発しそうになっていく。

怖い・・・怖い!
一旦は受け入れようとしたのだが、やっぱり怖いものは怖い。
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