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天狐あやかし秘譚
第49章 淫祠邪教(いんしじゃきょう)
ただ、真白や颯馬に対する仕打ちに対しては、罪状のつけようがない。
彼らが代々犯してきた、最も重い罪に対して、日本の法律は、それを裁く方法を有していないのだ。

「こんなん、綾音はんには聞かされへん・・・」
冒頭と同じことを、土御門様は再度呟く。

見ず知らずの人が『大切な人を守ろうとしていたから』という理由だけで、自らの命を顧みずに助けようとした、あの心優しい女性が、もしこのことを知ったら、大層ショックだろう。

しかし、彼女にも真相を知る権利がある。
これだけ本件に関わっているのだから、この背景事情もいつかは知らせななければいけないだろう。

はあ・・・とため息をつく、我が主。

仕方ないなあ。
さっき、ちょっとかっこよかったし、これからきっとたくさん偉い人に怒られるだろうし。それに何より、綾音を傷つけないように、と心配りをしようともしている。

その姿勢に免じて・・・
「綾音さんには、私の方からうまく事情を話しておきます」
「ほんま!?」

ああ・・・少し、元気になったみたい。
今回は、あなたのその姿勢に免じて甘やかしてやるとしよう。

私は土御門様の背後の窓に目をやる。
窓の外はとても良く晴れているけれど、私も、土御門様も、心の中はどんよりとしていた。
せめて、水晶柱に閉じ込められた二人の魂が、現世で果たせなかった幸せな逢瀬を、常世で迎えていることを祈るしかないな、と私は思った。
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