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天狐あやかし秘譚
第50章 【第11話 管狐】辺幅修飾(へんぷくしゅうしょく)

☆☆☆
「いやあ!20年・・・もっとか・・・25年くらい経ったか?お前、変わらないな!」
高校生の頃そのままの笑顔だった。
やはり、つい、観察をしてしまう。
身なりはすごく整っている。靴もきれいに手入れがされている。
ただ、口調は明るいが、若干、顔色が悪いような・・・疲れているような感じがした。
島本は、高校の教師をしていると言っていた。そこで、野球部の顧問をしていて、生徒と一緒に汗を流しているという。
島本らしいし、そのガタイの良さ、若々しさにも納得がいくというものだ。
「お前は相変わらず学者肌・・・っていうか、本当に学者だっけか?」
「ああ、東山大学で民俗学を教えている」
「すごいな、お前、昔から民話とか伝説とか、そういうの好きだったもんな」
他愛のない話。
壁にもたれ、グラスを傾け、互いの近況を伝え合う。
さり気なく指先に目をやると、結婚指輪の類はしていない。だけど、更に良く見ると、指輪の跡だけがあって、指輪本体がないようだった。
島本に限って、ワンナイトラブ目当てで結婚指輪を外す、なんていうことは考えられない。どういうことだろう。
そんな私の視線を気取ったのか、島本が『ああ、これな』と左手を振ってみせた。
「今、離婚調停中なんだ。指輪、いたたまれなくてな」
一体何が・・・と聞きかけて、聞いたところで何もできないだろうし、そもそも、聞いた時、自分がどんな反応をしてしまうか、想像がつかなかったので、「そうか、大変だな」という当たり障りのない言葉でお茶を濁す。
「お前は結婚してないんだな」
それでも、そんな言葉をかけられて、ズキンと胸が痛んだ。
やっぱり、高校時代のこと、未だに引きずってしまっている。
そんな自分が滑稽ですらあった。
「ああ・・・なかなかうまくいかなくてな」
やはり、当たり障りなく。
「でも、まあ、こうして調停してっと、結婚しないってのもいいかもって思っちまうよ」
そう言って笑った島本の顔はやはりどこか弱々しかった。
疲れていると思ったのは、これが原因だったのだろう。
「いやあ!20年・・・もっとか・・・25年くらい経ったか?お前、変わらないな!」
高校生の頃そのままの笑顔だった。
やはり、つい、観察をしてしまう。
身なりはすごく整っている。靴もきれいに手入れがされている。
ただ、口調は明るいが、若干、顔色が悪いような・・・疲れているような感じがした。
島本は、高校の教師をしていると言っていた。そこで、野球部の顧問をしていて、生徒と一緒に汗を流しているという。
島本らしいし、そのガタイの良さ、若々しさにも納得がいくというものだ。
「お前は相変わらず学者肌・・・っていうか、本当に学者だっけか?」
「ああ、東山大学で民俗学を教えている」
「すごいな、お前、昔から民話とか伝説とか、そういうの好きだったもんな」
他愛のない話。
壁にもたれ、グラスを傾け、互いの近況を伝え合う。
さり気なく指先に目をやると、結婚指輪の類はしていない。だけど、更に良く見ると、指輪の跡だけがあって、指輪本体がないようだった。
島本に限って、ワンナイトラブ目当てで結婚指輪を外す、なんていうことは考えられない。どういうことだろう。
そんな私の視線を気取ったのか、島本が『ああ、これな』と左手を振ってみせた。
「今、離婚調停中なんだ。指輪、いたたまれなくてな」
一体何が・・・と聞きかけて、聞いたところで何もできないだろうし、そもそも、聞いた時、自分がどんな反応をしてしまうか、想像がつかなかったので、「そうか、大変だな」という当たり障りのない言葉でお茶を濁す。
「お前は結婚してないんだな」
それでも、そんな言葉をかけられて、ズキンと胸が痛んだ。
やっぱり、高校時代のこと、未だに引きずってしまっている。
そんな自分が滑稽ですらあった。
「ああ・・・なかなかうまくいかなくてな」
やはり、当たり障りなく。
「でも、まあ、こうして調停してっと、結婚しないってのもいいかもって思っちまうよ」
そう言って笑った島本の顔はやはりどこか弱々しかった。
疲れていると思ったのは、これが原因だったのだろう。

