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天狐あやかし秘譚
第53章 奇想天外(きそうてんがい)
☆☆☆
清美さんとみゆきちゃんにはお風呂に入ってもらい、そのまま和室に泊まってもらうことにした。二人はつい先ほど就寝したようだった。

さて、これでやっと準備が整った。

「で?どうして、清美さんに憑いているの?」

まだ春浅い綿貫亭の庭先。まるまると太り始めた月が夜空にかかっている。
私は、庭木である桜にもたれて、窓辺にぼんやりと立っている貧乏神に詰め寄っていた。ダリも桜の木の枝に腰掛けてその様子を窺っている。

別にすごい剣幕で睨みつけた訳ではないと思うが、若干怒りが漏れ出ていたかもしれない。そのせいか、貧乏神がおどおどとたじろいでいる様にも見えた。
『それが、我の責務であるからして・・・』
姿に似合わない妙に甲高い声で応えた。

「あんた、一体、何が望みなの?」

実はこれが高森さんのレポートにあった回向の方法の第一ステップだ。
『貧乏神の要望・言葉を聞くこと』
昔話では餅を食わせろとか、服をよこせとか言われて、その通りにしたら貧乏神が出ていったという逸話があるようだ。また、逆の例もある。例えば真冬に『この家は寒くて居心地がいい』と貧乏神が言っているのを盗み聞きし、逆に炭を燃やして家を暖めたことで見事に貧乏神を追い出せたという話もある。

つまりは、まず貧乏神の話を聞くことがこいつを追い出すヒントになる、というのだ。

『望み・・・。ああ、もう望みは既に叶ったなぁ・・・』
ニヤッと笑って貧乏神は言う。笑って開いた口の中は歯が何本も欠けていて、それがまた貧乏神感を出している。

え?望み・・・叶っているの・・・?
「じゃあ、もう清美さんに憑いている意味は・・・」
言いかけたところで、貧乏神が『キシシシシ』と奇妙な笑い声を上げ、私の声に重ねるようにして言ってきた。

『慌てなさんな。叶ったのは清美の望みじゃて。
 そうだなあ、お主、綾音と申すか?実はな、もうひとつ、我がの願いもあるんじゃ・・・それを・・・叶えてはくれんかの?』

え?二つもあるなんて聞いてないよ・・・。

「もうひとつって・・・?」
法外なものだと困ってしまう。
薄い月明かりの下、貧乏神が不敵に笑う。
『我の望み・・・それは・・・』
「それは?」
ゴクリとつばを飲み、身構える。
でも、彼が言い出したのは実に意外な『要望』だった。

『野球観戦じゃ』
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