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天狐あやかし秘譚
第64章 竜虎相搏(りゅうこそうはく)

鋭い斬撃が空間を裂いた。ずどん、となにか重たいものが落ちる音が響く。その後、御九里の身体は中空で刹那の間、静止し、重力の法則に従って落下を始め、着地をする。
「やったのか?」
上空で繰り広げられた攻防を垣間見た九条は、着地をした御九里に駆け寄り、背中合わせに立つ。敵はもう一人いる。まだ油断はできないと油断なく周囲を伺った。
「ちっ!・・・まだだ」
九条の背後で体勢を立て直した御九里が呟いた。小玉鼠によって立てられた土煙はまだ落ちきらず、周囲は視界の悪い状態が続いていた。
「まだなの!?・・・きっちりトドメさしてよっ!!」
九条が文句を言う。煽られて素直に悔しがった御九里がギリリと歯噛みする音が響く。
「野郎・・・自分から落ちやがった」
そう、御九里が斬撃を繰り出す寸前、自分の防御が間に合わないと悟ったクチナワはそのまま樹から落下する道を選んだのだ。御九里が着地する寸前に聞いた音は、彼が地面に激突する音であった。御九里はその瞬間を見ていたので、クチナワに『逃げられた』ことを悟っていた。
だが、彼らは知る由もないことなのだが、クチナワ自身は落下する寸前、彼は緩衝材とするべく落下地点に蛇を召喚したものの、その衝撃が激しく、背中をもろに打っていた。息が止まり、視界が暗転し、気絶していたのである。そして、彼の気絶とともに、彼が召喚した全ての幻獣生物は消えていたし、異形ではない蛇たちは消えこそしていないが、その大半は彼の落下した衝撃で死んだか逃げたかしてしまっていた。つまり、実際は九条と御九里が警戒する必要はなくなっていたのである。
もし今、広場を俯瞰で見ているものがいたらこう見えただろう。
樹の下で気絶しているクチナワ。
それがまだ活動していると思い、その動向を警戒しあたりを伺い続ける九条と御九里。
そして、睨み合うダリとカダマシ。
こうして、カダマシ対ダリ、クチナワ対御九里・九条戦は、視界が悪い広場において、互いに膠着の様相を呈することとなっていた。
「やったのか?」
上空で繰り広げられた攻防を垣間見た九条は、着地をした御九里に駆け寄り、背中合わせに立つ。敵はもう一人いる。まだ油断はできないと油断なく周囲を伺った。
「ちっ!・・・まだだ」
九条の背後で体勢を立て直した御九里が呟いた。小玉鼠によって立てられた土煙はまだ落ちきらず、周囲は視界の悪い状態が続いていた。
「まだなの!?・・・きっちりトドメさしてよっ!!」
九条が文句を言う。煽られて素直に悔しがった御九里がギリリと歯噛みする音が響く。
「野郎・・・自分から落ちやがった」
そう、御九里が斬撃を繰り出す寸前、自分の防御が間に合わないと悟ったクチナワはそのまま樹から落下する道を選んだのだ。御九里が着地する寸前に聞いた音は、彼が地面に激突する音であった。御九里はその瞬間を見ていたので、クチナワに『逃げられた』ことを悟っていた。
だが、彼らは知る由もないことなのだが、クチナワ自身は落下する寸前、彼は緩衝材とするべく落下地点に蛇を召喚したものの、その衝撃が激しく、背中をもろに打っていた。息が止まり、視界が暗転し、気絶していたのである。そして、彼の気絶とともに、彼が召喚した全ての幻獣生物は消えていたし、異形ではない蛇たちは消えこそしていないが、その大半は彼の落下した衝撃で死んだか逃げたかしてしまっていた。つまり、実際は九条と御九里が警戒する必要はなくなっていたのである。
もし今、広場を俯瞰で見ているものがいたらこう見えただろう。
樹の下で気絶しているクチナワ。
それがまだ活動していると思い、その動向を警戒しあたりを伺い続ける九条と御九里。
そして、睨み合うダリとカダマシ。
こうして、カダマシ対ダリ、クチナワ対御九里・九条戦は、視界が悪い広場において、互いに膠着の様相を呈することとなっていた。

