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天狐あやかし秘譚
第64章 竜虎相搏(りゅうこそうはく)

九条が鞭をまたひと振りする。鞭の射程は長いものの、小玉鼠の爆発半径もそれなりに広い。もし、九条の持っている武器がただの鞭であるなら、疾うの昔に九条自身が爆発によるダメージの蓄積で倒れていただろう。そうはなっていないのは、九条の持つ武器の特性にある。九条が手にしている武器は、『金鞭(かなむち)』と呼ばれている。その形状は20センチほどの握りのある金属性の棒の先端に、水の力を封じた宝玉を据えたものである。その宝玉を媒介に、様々な水の術を放出することができる。彼が好んで使うのは、今使っている形状『歳刑鞭』である。水の属性を持つ長さ自在の鞭であり、うまく使えば筋力をさほど用いなくても強力な攻撃を繰り出すことができる。
そして、今、九条はその宝玉に武器としての鞭の機能以外にも己の身体を守る結界の機能を持たせている。霊力のある人間が見れば、九条の持つ金鞭の先端の宝玉が薄青く輝き、その光が彼の身体を覆っているのに気づくだろう。
この攻防一体の立ち回りが彼の持つ『金鞭』の真骨頂であった。
小玉鼠が九条に惹きつけられている一方、御九里は爆炎に紛れ慎重に機会を伺っていた。手にした大太刀を背中に担ぐように持ち、左手で刀印を結ぶ。
「皇天上帝 三極大君 日月星辰 八方諸神 司命司籍・・・」
呪言とともに、身体に気が満ち始め、膂力が向上するのがわかる。
視線を上に持って行く。狙いを定め、刀の握りに力を込めた。
「左に東王父 右に西王母 五方五帝 四時四気 金気邪を祓い給へ」
頼むぞ・・・鬼丸国綱改(おにまるくにつなあらため)!
両の足に込められた力を解放する。爆発的な力が大地に衝突し、その反作用により御九里の身体は一気に中空に打ち出された。急激な動きに大気が着いてこられず、それは御九里にとって強い抵抗となって感じられた。その抵抗の中、御九里は両手で太刀を握ると次の瞬間には爆炎と土煙を抜け、その眼前にクチナワを捉えていた。
「なにっ!!」
突然、地表から目の前に躍り出てきた御九里に、クチナワが目を剥く。慌てて御九里に両の手を向けようとする。
しまった!ここまで一息に飛び上がってくるとは!
早く、防御を・・・
クチナワの脳が処理できたのはここまでだった。クチナワが何某かの術を発動するより早く、御九里の斬撃が彼を袈裟懸けに斬り伏せるべく閃いた。
「金気・金刀一閃」
そして、今、九条はその宝玉に武器としての鞭の機能以外にも己の身体を守る結界の機能を持たせている。霊力のある人間が見れば、九条の持つ金鞭の先端の宝玉が薄青く輝き、その光が彼の身体を覆っているのに気づくだろう。
この攻防一体の立ち回りが彼の持つ『金鞭』の真骨頂であった。
小玉鼠が九条に惹きつけられている一方、御九里は爆炎に紛れ慎重に機会を伺っていた。手にした大太刀を背中に担ぐように持ち、左手で刀印を結ぶ。
「皇天上帝 三極大君 日月星辰 八方諸神 司命司籍・・・」
呪言とともに、身体に気が満ち始め、膂力が向上するのがわかる。
視線を上に持って行く。狙いを定め、刀の握りに力を込めた。
「左に東王父 右に西王母 五方五帝 四時四気 金気邪を祓い給へ」
頼むぞ・・・鬼丸国綱改(おにまるくにつなあらため)!
両の足に込められた力を解放する。爆発的な力が大地に衝突し、その反作用により御九里の身体は一気に中空に打ち出された。急激な動きに大気が着いてこられず、それは御九里にとって強い抵抗となって感じられた。その抵抗の中、御九里は両手で太刀を握ると次の瞬間には爆炎と土煙を抜け、その眼前にクチナワを捉えていた。
「なにっ!!」
突然、地表から目の前に躍り出てきた御九里に、クチナワが目を剥く。慌てて御九里に両の手を向けようとする。
しまった!ここまで一息に飛び上がってくるとは!
早く、防御を・・・
クチナワの脳が処理できたのはここまでだった。クチナワが何某かの術を発動するより早く、御九里の斬撃が彼を袈裟懸けに斬り伏せるべく閃いた。
「金気・金刀一閃」

