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天狐あやかし秘譚
第68章 多情多恨(たじょうたこん)

シンポウ、自由、どういうことだ?
左手のスクセが小型の水筒のような金属製の円筒を持って俺のところに来た。手を出すように言われたので両手を出すと、その水筒からコロンと勾玉がひとつ出てくる。
勾玉は5センチほどの大きさで、形こそ昔教科書で見たような、古代の装飾具である勾玉であったが、色が不思議であった。赤くぼんやりと輝いており、その中で紫色の文様のようなものが蠢いていた。一体何でできているのかわからないものだった。
「それは生玉(いくたま)と呼ばれるシンポウ。神の宝と書いて神宝だ。手にとって、異常はないね」
異常・・・異常と言えば、この玉が一番異常だ。
手に取っている自分自身には異常を感じない。
「特に、俺に異常はないです」
応えると、お館様は「うん、いいね」と言った。
「おいおい説明するけどね。それはとりあえず君に預けるよ。使い方はスクセとキヌギヌに聞くといい。きっと気に入るよ。使い方がわかったら、外に出て好きに過ごすといい。ただし、僕が来いといったらここに戻ってきてほしい。そして、僕の仕事を手伝うんだ。交換条件はそれだけだ。いいね?」
いいねもなにも、意味がわからない。
口ぶりと、この玉の不思議な様子から言って、なにかとてつもない力が宿っているのは分かるが、どうして俺がそれを?というのもあるし、彼の言う「仕事」というのも気にはなる。
「戸惑っているね・・・。まあいいや。スクセ、キヌギヌ、彼に・・・うん、そうか、名前が必要か」
少しお館様は考えている様子を見せ、そして言った。
「そうだね。カダマシ、にしよう。君は、今日からカダマシだよ。これまでの名、確か・・・京本雄一、だっけ?それは捨ててしまいなさい。僕らの仲間、カダマシ。それが君の新しい名だ」
左手のスクセが小型の水筒のような金属製の円筒を持って俺のところに来た。手を出すように言われたので両手を出すと、その水筒からコロンと勾玉がひとつ出てくる。
勾玉は5センチほどの大きさで、形こそ昔教科書で見たような、古代の装飾具である勾玉であったが、色が不思議であった。赤くぼんやりと輝いており、その中で紫色の文様のようなものが蠢いていた。一体何でできているのかわからないものだった。
「それは生玉(いくたま)と呼ばれるシンポウ。神の宝と書いて神宝だ。手にとって、異常はないね」
異常・・・異常と言えば、この玉が一番異常だ。
手に取っている自分自身には異常を感じない。
「特に、俺に異常はないです」
応えると、お館様は「うん、いいね」と言った。
「おいおい説明するけどね。それはとりあえず君に預けるよ。使い方はスクセとキヌギヌに聞くといい。きっと気に入るよ。使い方がわかったら、外に出て好きに過ごすといい。ただし、僕が来いといったらここに戻ってきてほしい。そして、僕の仕事を手伝うんだ。交換条件はそれだけだ。いいね?」
いいねもなにも、意味がわからない。
口ぶりと、この玉の不思議な様子から言って、なにかとてつもない力が宿っているのは分かるが、どうして俺がそれを?というのもあるし、彼の言う「仕事」というのも気にはなる。
「戸惑っているね・・・。まあいいや。スクセ、キヌギヌ、彼に・・・うん、そうか、名前が必要か」
少しお館様は考えている様子を見せ、そして言った。
「そうだね。カダマシ、にしよう。君は、今日からカダマシだよ。これまでの名、確か・・・京本雄一、だっけ?それは捨ててしまいなさい。僕らの仲間、カダマシ。それが君の新しい名だ」

