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人外に愛される【短編集】
第3章 優しい死神
ある所に、とても優しい死神がいた。







優しい死神は長いフードの付いた黒いコートを被り。

顔には骸骨の仮面を付けていた。








死神達は、その風貌は似ているが、仮面を付けているのは優しい死神だけだった。

彼が何故仮面をずっと付けているかと言うと。

ずっと泣いているからだった。








『落ちこぼれは今日も泣いていて、魂を取ってこれなかったのか?』

先輩の死神は、1人で蹲っている優しい死神に声をかけた。

呆れた様な、揶揄う様な、そんな声に優しい死神は顔を上げる。








『………ちゃんと取ってきたよ…。』

優しい死神は手に持っていた青く光る魂を見せながら言った。







『だったらなんで泣いてるんだよ。』

先輩の死神は、優しい死神の頭を掴んでクシャクシャと髪を毟った。

『うっ……だって、魂取る時にその人が「まだ生きたい」って泣くから。』







くちゃくちゃな髪の毛のまま、優しい死神はまた泣き出した。

今度は本気で呆れたため息が、先輩の死神から聞こえた。









『いちいち、死んだ人間に泣いてたら、お前の涙が枯れちまうぞ。』

分かってる…。

自分が人間の魂を取るなんて、日常茶飯事だったから。









だけど優しい死神はその事にいつまで経っても慣れない。

死神は、人間の魂を取らないと、自分の寿命が無くなってしまう。







先輩の死神は、この優しい死神がいつか魂を取らなくなり、無に返ってしまうのではないかと心配だった。







『何がそんなに悲しいんだ?』

『…病気や事故で痛みを持ったまま死んでいった人の叫び声が怖い…。』

それがいつまで経っても慣れないのだった。


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