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人外に愛される【短編集】
第3章 優しい死神
『それだったら、お前が泣かなくていい方法があるぞ。』

メソメソ泣いている優しい死神に、先輩の死神は言った。

優しい死神は、泣いていた顔を上げた。

先輩の死神は、ニヤッと笑ってそんな優しい死神を見下ろした。









『俺たちの血には、人間の苦痛を取り除く効力があるんだ。』

先輩の死神は、腕を見せながら自慢げに言った。

『……それなら…、痛みや苦痛は無くしてあげられるの?』








優しい死神は、目をキラキラさせながら先輩の死神を見て聞いた。

『ああ、だからお前が悲しむ必要は無くなるぞ。』

優しい死神は、自分の両手を開いて、目を大きくさせて見つめた。








もう2度と。

人間達の苦痛の顔を見なくて済む様になる。








優しい死神はとても嬉しい気持ちになった。









そして、病気の人間が居れば、優しい死神はまだ死ぬ時期でも無いのに、その人間の前に現れる様になった。









死神の体を傷付けられるのは、銀のナイフだけだ。

優しい死神は自分の腕に銀のナイフを刺し、血を流した。







そして、その血を人間の口の中に流し込む。

すると、苦痛で歪んでいた人間の顔が、和らいでいくのが分かった。







優しい死神は嬉しくなった。

これで、彼らが死ぬときは、もう苦痛に苦しむ姿を見なくて済むからだ。








それから優しい死神は泣かなくなった。

彼は涙を流さない代わりに沢山の血を流した。








優しい死神の体は傷だらけになっていった。

だけど、優しい死神が幸せそうに笑う様になったので、先輩の死神も何も言わなくなった。








そして、優しい死神は1人の少女に出会った。


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