この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
ヘデラの夢は見られない【呪術/ヤパロ/夏油傑】
第1章 EPISODE-00
「杉本 芽衣さんですね?」
突然近づいて来た男に、芽衣は身を竦ませた。
高身長の筋肉質な体躯に、青いワイシャツと白い背広姿の男、七海建人は問いかけた。金髪に顔にはめ込むような変わったサングラスをした七海に、芽衣は怯みながらもこくんと頷いた。
大学内の敷地とあってか、生徒達がザワザワと芽衣達を見てはヒソヒソと話す声が聞こえて来る。
「まだ授業がおありでしたか?しかしながら申し訳ない、今すぐに私と一緒に来てください。あまり手荒な事はしたくはありませんので、ここは素直に従って頂きたいのですが」
「···あ、の。私」
緊張感から芽衣は喉が張り付く感覚を覚えて、咳き込みそうになる。嫌な予感が胸を過ぎり、ドクドクと心臓が嫌な音をたてた。
「貴女が拒否をした所で、ただの時間稼ぎにしかならない。それに···いや、これはここで話すべき内容ではありませんね。···とにかく、私は貴女を連れて来るようにと命じられていますので、こちらで手配した車へ乗ってください」
七海のサングラスの奥の瞳が細められ、ジッと七海は怯える芽衣の姿を捉えて、同情すら覚えそうだ。それでもこれは夏油傑、頭の命令であり誰も逆らえる者はいやしない。いるとしたら、仲の良い五条悟くらいだろう。と、七海の脳裏に軽薄な男の姿が浮かんだ。
手配された車、黒塗りの高級車だろうそれは一瞬にしてわかった。
今までの平穏だった芽衣の日常は、この日を境に一変して地獄の入口へと転がり落ちたのである。