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白昼夢
第6章 ピザ
「俺さ、食にもこだわりないけどさ、物にもこだわりなくてさ…だから、家には物が少ないんだ…」
私は、この言葉を聞いてこの壮年は何に拘っているのだろうか。
そう、思ってしまったのだ。
私はちょっと恥ずかしく感じながら古川とピザを食べた。
つい、さっきまでのベッドでの出来事を思い出していたからなのだ。
いとも簡単に、私は初めて出会った男に潮を吹かされてしまった。
それが凄く恥ずかしかったのだ。
亡くなった彼氏である貴博さえ、私のGスポットを見つけることが出来なかった。
それを、初めて抱いた女に潮を吹かせるとはこの古川と言う男は何者なのかと思ったのだ。
それと同時に、この男は女の扱いにとても慣れていると思っていた。
それに、とても優しい言葉をかけてくる。
「俺さ、ピザなんてこんなに真面目に食べたことなかったから、マジで旨くて驚いた…」
「そうなの?」
「うん、いつも酒のつまみでちょっとだけ食べてるからさ…」
私たちは余り会話もなくピザを口に運んでいた。
ピザは最後の一切れを残してお互いにもうこれ以上食べられなくなってしまった。
「もう、食べないの?」
「うん、俺、もうこれ以上食べられないから最後の一切れは真理子さんが夕飯にでも食べてよ…」
「分かったわ…」
そう言うと、私はピザの箱とお皿を片付けキッチンへと運んだ。
古川は煙草を吸いたいからと言い、キッチンにやって来て煙草をくゆらせていた。
私は洗い物を直ぐに片づけないと気が済まない性格をしていた。
古川は私が洗い物をする姿を見ながらゆるりと煙草をくゆらせている様だった。