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白昼夢
第8章 余韻
私たちはパーキングのある所まで歩いて行った。
だが、途中で古川がこう言ってきたのだ。
「あ!分かった、ここの道分かるよ…」
「そう?覚えてた?」
「うん、覚えてたよ…」
「もう、ここからは一人で大丈夫だから…」
「そう?」
私は少し残念な気持ちになった。
「暑いからここまでで大丈夫だよ、真理子さんは家に帰ってね…」
「わかったわ…」
私はパーキングまで一緒に行けると思いそれを愉しく感じていたのだ。
私たちはこう言って別れた。
「今日は、ありがとう…またね…」
そう言うと私たちはハイタッチをして手を握り合った。
私は身をひるがえすと来た道を戻り歩いて行った。
その途中でも何度も振り返り古川の背中を見ていたのだ。
だが、古川は一度も振り返る事はなかった。
私は何度も何度も、振り返って古川の背中を見ていた。
すると、やがて古川の姿が見えなくなった。
私はちょっと淋しい気持ちで自宅へと帰ったのだった。
部屋に戻ると何となく空虚な気持ちになっていた。
部屋には朝掛けたCDのジャズの曲が流れていた。